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アフリカ

アフリカの水不足と病気の関係:日本の支援がもたらす恩恵

水不足が引き起こす病気は依然として深刻な課題です。しかし、日本がアフリカに提供している水関連の支援により、その病気の発生率の低下が報告されています。この記事では、アフリカにおける水不足と病気の問題、日本がアフリカに提供している水関連の支援について解説し、日本の技術による水質改善の取り組みについても紹介します。

アフリカの水不足と病気の関係:日本の支援がもたらす恩恵

水不足が引き起こす病気は依然として深刻な課題です。しかし、日本がアフリカに提供している水関連の支援により、その病気の発生率の低下が報告されています。この記事では、アフリカにおける水不足と病気の問題、日本がアフリカに提供している水関連の支援について解説し、日本の技術による水質改善の取り組みについても紹介します。

(目次)

  1. 人々の生活を脅かすアフリカの水不足
  2. 水不足は病気を引き起こす大きな要因のひとつ
  3. アフリカの水不足の解消は日本企業にメリットも
  4. 現在行われているアフリカ水不足解消への取り組み
  5. まとめ

人々の生活を脅かすアフリカの水不足

アフリカには水源や水道施設が不十分な地域が多く、特に農村地帯では水不足が深刻な問題となっています。人々が十分な飲料水を得ることができないため、水不足は健康に深刻な影響を与えます。では、どのくらい深刻なのかアフリカ各国で起きている水不足の状況をご紹介します。

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アフリカにおける水不足の現状

現在、アフリカだけでなく、世界中で水不足が叫ばれています。ユニセフの最新分析によると、アフリカの10カ国(ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、コートジボワール、ギニア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、ソマリア)の1億9,000万人の子供たちは、水不足、水に関連する疾患、気候災害の三重脅威に直面しています。

特に、サヘル地域※にある、最も水不足の影響を受けている国々の多くでは、不安定な情勢や武力紛争により、きれいな水や衛生設備を子供たちが利用しにくくなっています。

※サハラ砂漠の南縁に広がる地域であり、セネガルの北部からモーリタニア南部、マリのニジェール川周辺、ブルキナ・ファソ、ニジェール南部、ナイジェリア北部、チャド中南部を経てスーダンに至るまでの地域を表す。

また、これら10カ国の子供のうち、3分の1近くが基本的な飲み水が利用できず、3分の2は基本的な衛生施設が利用できない状況にあります。

その結果、世界の中でも特に多くの子供たちが安全でない水と不衛生な環境に起因する疾病により死亡しており、緊急の対策が必要な問題となっています。

※参照URL:https://gooddo.jp/magazine/water-and-sanitation/africa_sanitation/2100/
※参照URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002104.000005176.html

アフリカの水不足の原因

アフリカにおける水不足の原因は、気候変動、人口増加、都市化、砂漠化などが挙げられます。

まず、気候変動により降水量の変化や乾燥化が起こって水資源の減少につながり、サハラ砂漠に近い地域では特に砂漠化の被害が深刻です。

また、全体的な水資源は減少しているにも関わらず、都市部を中心に、富裕層では欧米諸国のように多量の生活用水を必要とする人たちが増加しています。その影響を受け、都市部の周辺地域では水源が枯渇しやすい状況となっています。

これらが原因となり、エチオピアのハラール地方では農業が困難になるなど、生活だけでなく経済活動にも支障が出てきています。

 

水不足は病気を引き起こす大きな要因のひとつ

アフリカにおける水不足は、農業や産業だけでなくアフリカの人々の病気を引き起こす原因にもなっています。ここでは、水不足が健康に及ぼす影響や水不足の原因を見ていきましょう。

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水不足が引き起こす主な感染症

水不足が深刻な地域では、安全でない水を飲むことや不衛生な環境に暮らすことが多くなり、下痢病やコレラなどの感染症が蔓延しています。水不足が引き起こす主な病気には、コレラ、腸チフス、マラリア、赤痢、ウイルス性肝炎などがあります。

これらの感染症は酷い下痢をひき起こし、体力がない小さな子どもや病気の人たちから命を奪っていきます。感染は不衛生な水の飲用、食品の摂取、手洗い不足などによって起こります。

また、上記のような病原菌は下水処理が不十分な地域で発生するリスクが高く、感染者数は急速に増加する傾向があるため、注意が必要です。特に、子どもたちは免疫力が低く感染症にかかりやすいため、水不足が深刻な地域では、子どもの死亡率が高いです。

例えば、ナイジェリアはアフリカ諸国の中でも比較的発展している国ではありますが、2019年でさえ、1歳から4歳児までの子どもの下痢による死亡が国全体の死亡原因のうちの3位に入っています(10万人あたり141.08人)。その割合は日本の348倍であり(10万人あたり0.52人)未だに下痢や乳幼児の死亡率が高いことが明らかになっています。

※参照URL:https://www.who.int/data/gho/data/themes/mortality-and-global-health-estimates/ghe-leading-causes-of-death

※参照URL:https://www.unicef.or.jp/news/2022/0214.html

アフリカが水不足に陥る理由とは

まず最初に挙げられるのは、気候変動による降水量の減少や乾燥化です。これにより、サハラ砂漠周辺地域では砂漠化が進むだけでなく、農地や水源が荒れて更なる砂漠化を拡大させています。

また、人口増加や一向に止まらない紛争問題も水不足の原因です。現在でもアフリカ諸国では種族間、あるいは政府と種族の間において緊張状態が続いているため、水の供給やインフラ整備にまで手が回りません。

このように、アフリカにおける水不足はさまざまな要因が重なり深刻化しています。水不足を解決するためには、水資源の適切な管理や浪費の抑制、水の安全性の確保、衛生環境の改善などが必要とされています。

※参照URL:https://www.unicef.or.jp/news/2021/0133.html

※参照URL:https://mirasus.jp/sdgs/water-and-sanitation/290


アフリカの水不足の解消は日本企業にメリットも

日本は水資源が豊富であり、アフリカは遠く離れた国です。そのため「遠いアフリカ諸国の水資源の課題解決が、一体どのように日本企業のメリットになるのか」と疑問に思う人も多いと思います。ここでは、実際に日本の企業がアフリカの水不足の解消への協力で得られるメリットを紹介していきます。

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アフリカ市場の拡大 

アフリカ諸国は多くの課題を抱えている国が多いですが、欧米諸国とは違い日本企業がまだまだ参入できる余地があり、経済成長が期待される需要の高い市場です。

そこで日本の技術をアフリカに導入し、アフリカの水不足を解決すれば、アフリカ市場での日本企業のビジネスチャンスを増やす良い機会になります。

また、ビジネスチャンスがアフリカで増えれば、その人口の母体数はかなり大きいため日本経済の発展につながる足がかりにもなると考えられます。

国際社会への貢献 

アフリカにおける水不足は、人道的な問題として世界的に注目されています。アフリカの水不足を助けることにより、国際社会での日本の貢献度が高まり、国際社会における日本の評価が向上します。

日本は世界でもトップクラスの浄水処理技術や給水管理システムを持っています。特に浄水処理技術の進歩により、様々な有害物質を除去することができ、安全でおいしい水が常に私たちに提供されています。

現在はまだ日本国内にしか流通していない技術やシステムも多いですが、それらをアフリカ諸国の水資源が不足している地域に応用していけば、他の国々へのアピールにもなります。これにより、水道水が確保されるだけでなく、水漏れや水質汚染の防止など、より安全な水を効率的に供給できます。

2017年に発表された、WHOと国際飲料水協会(IBWA)が共同で実施した調査によると、日本の水道水が世界で最も安全な水道水の1つと評価されました。※1 

以上のように、日本は水関係のインフラにおいて、高度な技術や管理システムを持っており、世界でもトップクラスの水の安全性や水災害の防止などの取り組みを進めています。

※1参照URL:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HGB_S7A720C1TI5000/

ブランド価値の向上 

日本企業がアフリカにおける水不足を解決することは、2015年に「国連持続可能なサミット(SDGs:Sustainable Development Goals)」において掲げられた「清潔な水と衛生」※2に関する目標が実現できます。

また、アフリカにおける水不足の解消に関する社会貢献活動に取り組むことにより、環境(Environment)、社会(Social)および企業統治(Governance)の観点から企業の評価を行い、それらの評価がより高い企業に投資することを指す「ESG投資」において評価され、投資家の関心を引き付けることも期待できるでしょう。

それだけでなく、今でも日本企業は品質の高い製品を提供する国として世界的に知られています。そのため、水不足問題に対する取り組みを通じて、企業の社会的貢献活動が認知されることで、ブランド価値の向上につながると考えられます。

※2参照URL:https://sdgs-support.or.jp/journal/goal_06/

国際協力による人材育成 

日本の技術やシステム管理をアフリカに導入することで、現地の経済発展や社会的なインパクトを生み出すことができます。なぜならば、アフリカにおける水不足解決には、日本の技術やシステムを現地の人たちが実際に実施し維持していくために人材育成が必要だからです。

日本の技術やシステム管理に関する知識やノウハウを学ぶことにより、現地の人々が技術を向上させられれば、自立的な経済発展を促すことが可能になります。

また、技術移転によって、地域の生産性を向上させることができ、現地の雇用機会につながれば将来的な経済的サポートにもつながります。

 

現在行われているアフリカ水不足解消への取り組み

現在日本企業が開発したシステムがアフリカ諸国の水不足解消に取り組み、効果を上げています。ここでは実際の事例を説明します。

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双日株式会社の海水淡水化事業 

双日は2012年にアフリカのガーナ共和国で海水淡水化事業を開始し、スペインの水事業の大手企業と共同でプラントの建設と運営を手掛けています。

この取り組みでは、2,400万人の人口を抱えるガーナの深刻な水不足を改善するためで、2014年から首都アクラで生活用水の供給が行われています。

海水淡水化は、世界の水不足問題の解決に向けた重要な技術であり、逆浸透膜(RO膜)を利用した装置は、日本が世界に誇る技術の一つです。

今後もこの技術を駆使し、アフリカや中近東地域で海水淡水化事業に積極的に取り組む方針を示しています。

※参照URL:https://www.sojitz.com/jp/csr/priority/advance/post-7.php

※参照URL:http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/pdf/201305/201305_24.pdf

膜分離活性汚泥法(MBR)とRO膜を組み合わせた下水処理システム

膜分離活性汚泥法(MBR)とRO膜を組み合わせたシステムは、下水処理における新しい技術のひとつです。まず、分離活性汚泥法(Membrane Bioreactor, MBR) は、水処理技術の一つであり、微生物により汚水を分解・処理した後、ろ過膜を用いて浄水する方法です。

一方、RO膜(Reverse Osmosis membrane)は、高度なろ過膜の一種であり、日本では水の浄化、海水淡水化、化学物質の濃縮などに利用されてます。

現在、下水処理システムの発達した国では、これらのシステムを組み合わせることにより、下水から病原性原虫や大腸菌、ウイルスを除去し、安全かつきれいな水を常時供給しています。

この方法は、海から遠く離れた地域でも使用できるため、北アフリカや中東を中心に途上国で導入が進んでいます。

※参照URL:https://www.kubota.co.jp/product/membrane/business/

※参照URL:https://www.sankei.com/article/20161008-IMTR3ZXF5NPEXBXNJJNWT3MPOI/2/

 

生物浄化法を用いたヤマハクリーンウォーターシステム

生物浄化法(EPS)とは、微生物の力を利用して水中の汚染物質を分解・除去する方法の一つです。一般的には、汚染物質を分解する好気性微生物と、還元させる嫌気性微生物を同時に活用することで高い浄化効果を発揮します。

EPSには、活性汚泥法や固定化床式生物反応器(FBBR)、流動床式生物反応器(MBBR)などの種類があり、EPSは、低コストで運転管理ができるため、途上国などの水処理が必要な地域で広く利用されています。

ヤマハは、この装置をアフリカをはじめとする途上国に提供し、水不足の解消に貢献しています。また、この装置は、発電機やモーターなどの製造で培ったノウハウを活用しており、省エネルギーかつ低コストで運用できるというメリットもあります。

※参照URL:https://global.yamaha-motor.com/jp/stories/movingyou/001/

※参照URL:https://www.japanriver.or.jp/taisyo/oubo_jyusyou/jyusyou_katudou/no21/no21_pdf/nakamoto-nobutada.pdf

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まとめ

アフリカの水不足は、多くの国々で深刻な問題となっており、特に農村地帯では水源や水道施設が不十分で健康に影響を与えるほどの深刻さを示しています。

ユニセフの分析によると、アフリカ10カ国における1億9,000万人の子供たちが、水不足、水に関連する疾患、気候災害の三重脅威に直面していることが明らかになっています。

実際にアフリカにおける水不足は、病気を引き起こす根本的な原因となり、下痢病やコレラなどの感染症が現在でも数多く報告されています。

これらの病気は、水不足が原因で、不衛生な水の飲用、食品の摂取、手洗い不足などによって感染します。特に、子供たちは免疫力が低く感染症にかかりやすいため、水不足が深刻な地域では、子供たちの死亡率が高くなっています。

水不足の原因は、気候変動、人口増加、都市化、砂漠化などが挙げられます。特に、気候変動による降水量の変化や乾燥化が起こり、水資源の減少につながっています。

また、都市部では大量の生活用水を消費する欧米諸国の生活様式を好む人が増えているため、水需要が増加する影響により、都市周辺地域では水源が枯渇することが多くなっています。

その影響から、水資源の浪費と水の供給のバランスが安定せず、地下水の過剰採取や水の無駄使いが問題になっています。

アフリカにおける水不足問題を解決するためには、水資源の適切な管理や浪費の抑制、水の安全性の確保、衛生環境の改善などが必要とされています。

現在、日本企業が提供している技術や支援により、アフリカにおける水質改善の取り組みが進められていますが、まだまだ課題は多いのが現状です。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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