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アフリカビジネス

アフリカ医療の問題点と日本の製薬会社ができること

アフリカと聞くと「井戸から水を汲み、食べ物の配給される列に並んでいる人々」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。現代のアフリカの国々は世界中から資金援助や技術支援を受け、近代国家に生まれ変わっています。しかし、医療に関しては未だに問題点も多く、日本の製薬会社の企業進出が必要です。

アフリカ医療の問題点と日本の製薬会社ができること

 

アフリカと聞くと「井戸から水を汲み、食べ物の配給される列に並んでいる人々」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。現代のアフリカの国々は世界中から資金援助や技術支援を受け、近代国家に生まれ変わっています。しかし、医療に関しては未だに問題点も多く、日本の製薬会社の企業進出が必要です。ここでは、アフリカ医療の現状や日本の製薬企業ができることについてご紹介したいと思います。

 

目次:

アフリカの医療の現状

アフリカは都市開発が進み、ケニアやナイジェリアなどは新たなマーケテイングのターゲットとして脚光を浴びています。それでは、医療に関してはどうでしょうか。ここでは、発展した国も含めてアフリカの国々の医療の現状をお伝えします。

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男性特有の病気もアフリカでは治らないことが多い現状

例えば、男性特有の前立腺がんに関しては、日本とアフリカではその認識はかなり違います。日本では、定期検診に行っている方であれば、初期に発見されることの多いがんの1種です。治療も内視鏡手術など、負担を最小限に抑えた手術が行われ、予後を見ても比較的良い部類に入っています。 けれども、アフリカではがん全てがそうですが、「死の病気」です。前立腺がんも同様であり、多くの男性が気が付いた時にはステージ4の転移しており、輸血もできず骨が異常な形にゆがんだ状態のまま、なすすべもなく病院や自宅で療養している現状です。

 

女性と子どもはさらに悲惨な現状

女性や子どもに関しては、さらに深刻な状態に陥っています。元々アフリカは男性上位主義の社会のため、女性や子どもは男性に比べると病院にかかる割合も低くなります。そのため、女性は出産で命を落とすことも未だに多いです。また、HIVに関しては、国やWHOのさまざまな活動にも関わらず、増加傾向にあります(1)。 子どもに関しては、栄養失調から来るビタミンC欠乏症やビタミンD欠乏症(くる病)などの病気が未だに多いです。そのため、5歳以下で死亡する割合は世界の中でも最悪であり、現在でも18人に1人(約5%)の子どもたちしか5歳以上生き延びることができません(2)。
参照URL(1):https://gooddo.jp/magazine/health/africa_health/4044/
参照URL(2):https://www.who.int/publications/i/item/9789240051157
ダウンロードPDF内:p95-p126

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感染症の蔓延

アフリカは開拓されていない土地がたくさんあり、動物や植物も多いため新しい病原菌やウィルスなどが定期的に発見されます。病原菌やウィルスなどは気候や土地開発などに影響されるため、一旦それらが活発になると国中に感染が広まってしまいます。 また、感染で大切なことは、治療と予防です。治療に関しては感染症に対する特効薬や感染症薬の不足により、国民に充分に行き渡らないことが感染を蔓延する原因の1つになっています。 予防に関しては、衛生環境を整えられないことが蔓延させる要因です。そのほか、アフリカの方たちも衛生観念があまり育っていないため、母子感染や家族感染により感染症が蔓延してしまいます。
参照URL:https://www.ke.emb-japan.go.jp/ryoujianzen/Kenko20130608.pdf

医療が発展しない原因

WHOや各国のNPO団体の支援もむなしく、医療の発展に対してはいくつかの問題点があります。ここでは、その問題点を挙げていきます。

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原因1:文化の違い

日本語では死語になりつつある「男尊女卑」という言葉がアフリカの国では当たり前のように根付いています。もちろん、大学に進学する女性や管理職につく女性も多くなっていますが、依然として女性や子どもは男性の後という考えがあります。 そのため、医療に関しても男性は病気になると病院には行きますが、女性や子どもが行くのはかなり症状が進んでからであり、その結果手遅れになる場合も多いです。

 

原因2:政府や州・市町村を通さないといけない

アフリカ諸国のどの国も政府が強い力を持っています。そのため、特効薬を安くアフリカに届けることができても、政府自体がそれを他に転売してしまう可能性や拒否することがあります。 また、アフリカは国だけでなく州や市町村などでも独自の権限を持っており、自治体を作っている国がありますので、国に話を通しても自治体が拒否すれば薬が届かない場合があります。

 

原因3:医療費の高さと医療認識の低さ

ここ十年間の間に、ケニアなどは医療設備の整った病院や医療施設が多く建設されています。欧米諸国に比べれば劣りますが、アフリカ諸国の中では高レベルの医療設備が受けられる国に生まれ変わりました。 しかし、診察料金は日本円に換算して3000円前後、血液検査やCT撮影は10000円前後と高く、現地の方たちの収入からではとうてい支払えない金額です。保険などの制度もないため、一般の方たちは医療費のねん出ができず、病院へいくことを諦めてしまうのが現状です(1)。 また、日本やアメリカに比べて医学の一般的な知識や衛生観念、ワクチン接種や薬を飲むという考えがあまり浸透しておらず、コレラや黄熱病なども感染してから初めて分かるため、治療も遅くなりがちです。
※参照URL(1):https://healthcare-international.meti.go.jp/files/document/r2fy_kishoukai_tagcards_96_96.pdf※
※参照URL(2):https://www.ke.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00791.html & https://www.ke.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00590.html※

 

アフリカ進出のメリット

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アフリカは利権や政府などが強く、日本のしきたりや文化とは真逆のことが多い国々です。しかし、アフリカには進出するだけの魅力が十分あります。ここでは、アフリカに進出するメリットを挙げていきます。
  • メリット1.人口が多いためシェア拡大に貢献
  • メリット2.日本の薬や治療が有名なことは知られている
  • メリット3.アフリカに出回っていない薬が多い

メリット1.人口が多いためシェア拡大に貢献

アフリカは広大なため、日本やアメリカなどではシェアの拡大が難しい企業でも充分飛躍できる可能性があります。また、人口が多い分、治療薬が必要な母体数も多くなり、他の国々以上にシェアの拡大が期待できます。 アフリカは現在、がん治療薬の市場として大きな転換期を迎えています。例えば、スイスの大手製薬会社ロシュは、「ハーセプチン(Herceptin)」や「マブセラ(Mabthera)」などのがん治療薬を導入し、シェア拡大に成功しています。

※参照URL:https://www.swissinfo.ch/jpn/business/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%8C%E3%82%93%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%96%AC%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%9C%A8-%E6%94%BB%E5%8B%A2%E3%82%92%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%8B%E5%A4%A7%E6%89%8B%E8%A3%BD%E8%96%AC%E4%BC%9A%E7%A4%BE/48126568※

メリット2.日本の薬や治療が有名なことは知られている

どの国でも同じですが、アフリカの医師や研究者は優秀な方が多く、日本から発表された新しい治療薬やワクチン研究の情報にもかなり関心を持っています。 特に日本では有名な薬だけでも、高血圧治療薬 (カンデサルタン・オルメサルタン)、前立腺がん治療薬(リュープロレリン)、脂質異常症治療薬(プラバスタチン・ロスバスタチン)、免疫抑制薬(タクロリムス)、科活動膀胱(ぼうこう)治療薬(ソリフェナシン)、抗菌薬(レボフロキサシン)、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬(塩酸ドネペジル)、向精神薬(アリピプラゾール)など豊富な治療薬が揃っていますので、これらの薬をアフリカにも共有できればかなりのシェア拡大が見込まれるのではないでしょうか。

※参照URL:https://www.jpma.or.jp/about_medicine/guide/med_qa/q36.html※

 

メリット3.アフリカに出回っていない薬が多い

上記の薬もアフリカでのシェア獲得の可能性は高いですが、それ以外でも日本は世界有数のスキンケア産業国として有名です。 女性の美に対する意識は文化や生活様式が違っても同じです。 特にアフリカの女性はスキンケアやヘアケアに関心のある方が多く、身近にある植物などから自分自身で自作の化粧品などを作っている方も多くいらっしゃいます。 すでに、2013年に阿子島文子さんが立ち上げたロートメンソレータム・ケニア社では、スキンケアに注目しつつ、「地産地消」の日本独自の考え方を活かし、地元の農産物を活かしたケニアならではの製品開発を行い、現地の方たちに仕事の機会を提供しながら所得向上に貢献しています。 ※参照URL:https://www.rohto.co.jp/company/vision/sub05/※

 

日本の製薬会社の進出のためのTips

アフリカ諸国は親日国家も多く、新薬についての関心も高いです。今後日本の製薬会社がアフリカに進出していくためにはどのようなアプローチが必要なのかを説明していきます。

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アフリカ文化への理解と知識を深める

アフリカ文化は日本文化と違います。それは風土や天候などからくる環境や人柄など、複雑な要素が重なり合ってできています。そのため、最初はアフリカの文化や知識を深め、相手を良く知ることが大切です。 また、交渉する際にはそれらの造詣が深ければ誤解も起こりにくく、コミュニケーションも取りやすくなります。

 

政府や州・市町村にできるだけコンタクトを取る

医療関係者でも良いのですが、医薬品やワクチンの購入は州・市町村の予算から出ています。公立病院の場合には政府や州・市町村などが運営している場合がほとんどですので、まずはその州・市町村の役人の方にコンタクトを取り、話を聞いてもらう方が近道です。 日本は世界中に名を知られていますので、プレゼンテーションならばかなりの機関で承諾してくれるのではないでしょうか。

 

地域の発展になるような提案をする

ロート製薬がケニアに拠点を置き発展していけたのは、自分たちだけでなく地域の方々にも貢献できるような製品開発に焦点を当てたからです。アフリカの政府関係者たちは、自分たちの国の利益になることにはかなり興味を持ち話を進めていきます。 そのため、最初は治療薬やワクチンなど、求めている薬やワクチンを届けることが先決だと思いますが、将来的には地域の方たちの発展貢献にも役立つような提案をすると進出しやすいのではないでしょうか。

 

まとめ

アフリカは多くの独立国が隣り合う大陸です。国により貧富の差は激しく、近代的な都市に発展した国から内戦中の国までさまざまな情勢を抱えています。しかし、どの国でも医療に関しては問題点が多く、日本では考えられないような病気や感染症で毎日亡くなっています。 医療問題の原因は、文化の違いや国の中枢へのアプローチの難しさ、または医療費の高さなどがあります。それら全てを解決するのは難しいですが、アフリカは人口も多く治療薬を必要とする母体数も大きいため、世界中から製薬シェアの拡大を狙い、熱い視線が注がれています。 アフリカの文化や知識を深め、国の中枢へのコネクションを作るなど、アフリカ進出への準備は必要ですが、日本は新薬を創出する潜在能力の高い国ですので、日本がアフリカ進出に乗り出せば、製薬のシェアも飛躍的に広がると期待されています。
増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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