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女性の健康に着目!ルワンダ発「Kasha」を徹底解説!

ルワンダ発のスタートアップであるKashaがケニアにもその規模を伸ばし、今注目を集めています。ここでは、女性の健康、衛生、およびセルフケア製品販売に関するプラットフォームを提供しているKashaの企業概要や、どうやって現地の人たちに受け入れられたのかなどを解説していきます。

女性の健康に着目!ルワンダ発「Kasha」を徹底解説!

目次

  1. ルワンダはどんな国?
  2. Kashaとは
  3. Keshaの強み
  4. 今後のKashaについて
  5. まとめ

ルワンダはどんな国?

今回、ルワンダ発のスタートアップを紹介するにあたり、まずはルワンダという国の概要をご紹介します。

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ルワンダの特徴

ルワンダは東アフリカに位置し、ウガンダ、タンザニア、ブルンジ、コンゴ民主共和国と国境を接する内陸国です。国内には美しい自然環境が広がり、国立公園にはユニークな動植物が生息・生育しています。首都はキガリ(Kigali)であり、2019年時点で約1,263万人の人口を抱えています。

また、他のアフリカ諸国と同様に、多くの民族が共存している国です。その主な民族はフツ、ツチ、トゥワであり、日本とは違い、これらの民族が共存し現在でも大きな影響力を持っています。

ルワンダが他のアフリカ諸国と違うところは、内戦後、女性の地位向上に注力し、ジェンダー平等の精神が根付いていることです。2008年には世界で初めてジェンダー平等指数でトップに躍り出ました。この年の選挙では、世界で初めて女性が国会の過半数の議席を占めるようになりました。

※参照URL:ルワンダ基礎データ|外務省

※参照URL:「アフリカの奇跡」と呼ばれるルワンダの魅力!〜美しい街並みと穏やかな人々〜 - ONIBUS COFFEE

※参照URL:「ルワンダってどんな国?」2分で学ぶ国際社会

 

ルワンダ大虐殺

ルワンダを語るうえでどうしても外せないことがあります。それが、ルワンダ大虐殺です。

ルワンダ大虐殺は、1994年4月から7月までの約100日間にわたり、アフリカのルワンダで発生した大量虐殺事件です。このジェノサイドは、ツチ族とフツ族の間での民族対立に端を発しています。

ルワンダ内戦とも関連しており、ツチ族出身の大統領ハビャリマナが暗殺され、これがきっかけとなって発生しました。このルワンダ大虐殺で推定で約80万人から100万人に及ぶ人々が虐殺され、多くの女性も性暴力の犠牲となりました。

原因は多くの負の要素が重なっていますが、特に言われているのが植民地化です。ルワンダはドイツ、後にベルギーの植民地として支配されました。この植民地時代における民族間の階級差別や分割統治政策が、後の対立を激化させたと言われています。

また、経済格差も大きな要因の1つだと言われています。フツ族が国内で主要な権力を握っていた時期があり、これがツチ族との経済格差を生み出し、政治的な緊張を引き起こしました。

※参照URL:フツ族ツチ族とは?ルワンダ内戦に至った歴史を解説 | ELEMINIST(エレミニスト)

※参照URL:ルワンダ虐殺とは?概要、歴史背景、その後の民族和解

 

Kashaとは

ここでは、ルワンダで生まれ、今ではケニアにもそのプラットフォームを提供しているKasha の誕生背景や現地の人たちに受け入れられた魅力などをご紹介していきます。

Keshaは女性の健康に焦点をあてた会社

CEOのJoanna Bichsel氏が2016年に設立したこのスタートアップは、女性の健康要素に特化しつつも、幅広い層の顧客にサービスを提供するデジタル小売プラットフォームです。

創業7年のKashaは、医薬品とFMCG(Fast-Moving Consumer Goodsと呼ばれる、比較的短期間で消費される製品のこと)のデジタル小売とラストワンマイル流通(※1)プラットフォームを提供しています。

特に女性のヘルスケアニーズと家庭用品に重点を置き、生理用ナプキン、避妊具、紙おむつや掃除用品に至るまで、ウェブサイトやUSSDを通じて注文することができるようになっています。

freestocks-ux53SGpRAHU-unsplashKashaを利用するのは個人消費者、小規模な再販業者、病院、薬局、クリニックなど、さまざまなユーザーが利用しています。創業時のKashaは、女性や新生児向けの健康用品をラストワンマイルで配送する「消費者直販売」の方法でした。

しかし、真似をする業者が増えたため、Kashaは薬局、病院、診療所にサービスを提供するために必要な医薬品のライセンスを取得して卸売業サービスを開始し、新生児の健康、妊産婦の健康、月経衛生から、家族計画、性と生殖に関する健康、非感染性疾患までバラエティに富んだKashaの製品が売り出されるようになり、卸売・小売市場をリードしています。

※1:物流におけるラストワンマイルとは、最終拠点から消費者へ届くまでの配送区間のことで、届け先との最後の接点であり、最後の区間をどれだけ効率よく配送できるかが物流業界の課題とされています。

※参照URL:Kasha raises $21M Series B led by Knife Capital to expand health access platform across Africa | TechCrunch

※参照URL:Kasha

※参照URL:ラストワンマイルとは?物流業界における重要性や課題、解決方法を解説

Kashaができた背景

アフリカへの投資熱が高まる中、投資家たちはアフリカの民間ヘルスケア分野に注目しましたが、文化的に男尊女卑が特徴的なアフリカ諸国においては、女性の月経や生殖、または子宮や子宮頸がんなどに関する女性特有の病気や女性のスタートアップはあまり注目されていない状況でした。

そのような背景に目を付けたのがKashaのCEOであるBichsel氏です。Bichsel氏はインタビューの中で、女性の健康に目を向けた理由をこのように答えています。

「私たちは、女性が健康分野において最も影響力のあるユーザーであることを常に理解してきました。なぜなら、女性が最も健康や美容に対するニーズを持っており、家庭における健康の意思決定者であるからです。また、それと同時に、家族の健康に対する不安を解消しているからです。女性向けの健康商品の多くは誤解されたまま認識されている物も多いため(必要のない贅沢品であると)、Kashaは石鹸のようなパーソナルケア商品、避妊具のような商品、お米のような家庭で必要な物など、意図的に幅広い商品を提供するようにしています」

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Bichsel氏はまた、このプラットフォームで最も売れている商品には、HIV自己検査薬、避妊薬、妊娠検査薬などがあると述べています。そのため、今後も純粋にユーザーの要望と、小さなキオスクショップ、薬局、病院、診療所、消費者など、Keshaから購入する様々なユーザー層のニーズから、商品の種類を増やし続けていくと宣言しています。

※参照URL:Kasha raises $21M Series B led by Knife Capital to expand health access platform across Africa | TechCrunch

※参照URL:A transformative journey: Kasha’s mission to provide equal health access to all women - Business Fights Poverty

 

Keshaの強み

Kashaは自社で扱う製品が正規品であることを顧客に保証するため、メーカーやサプライヤーと直接協力し、ユーザー(消費者)、再販業者、クリニックに配布する製品を調達・在庫しています。この取り組みは、ユーザーのニーズに敏感に反応し無駄を無くさせるだけでなく、ワンマイル流通をスムーズに進めることにも役立っています。

Bichsel氏によると、Kasha社は、医薬品(Bichsel氏はKasha社がルワンダ最大のサプライヤーであると主張している)以外のSKU(※2)をより包括的に取り揃えているTwiga社やWasoko社など、東アフリカで設立された他のB2B eコマース・プラットフォームと違い、健康製品を中心に商品を取りそろえることにより、他の会社との差別化を図っていると語っています。

また、Kasha社は、B2B eコマース(B2B EC)(※3)の顕著な特徴であるテレヘルスとクレジットに関する信用があると述べ、「消費者が当社に注文し、処方箋を持っていない場合、当社はそのユーザーを医師につなぎます。また、私たちは薬局や診療所、病院に在庫数を提供してより広範な流通網を構築し、国内の大衆市場ユーザーに歩み寄り、ラストワンマイルを目指します」と語っています。

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このように、Kashaはユーザーが健康情報や商品購入への正しいアクセスを促し、より多くの女性が今まで自分の中で秘めていたような女性特有の病気や情報で悩まないようにサポートしています。

※2:Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位

※3:B2Bコマース(BtoBコマース、英:b2b commerce)とは、BtoB(企業間取引)をインターネット上でおこなう電子商取引のこと。 BtoBといっても、BtoB通販やネット卸、職域販売や受発注までさまざまな取引形態が存在する。BtoB EC をWeb受注型で活用している代表的なサービス例としては、「モノタロウ」や「アスクル」が挙げられます。 「モノタロウ」は主に製造業や建設工事業向けに間接資材や工具などを販売するBtoB ECサイトで、「工場のAmazon」と呼ばれています。

※参照URL:Kasha raises $21M Series B led by Knife Capital to expand health access platform across Africa | TechCrunch

 

今後のKashaについて

ここでは、Keshaが実際にどのように資金を調達しているのか、その規模や今後の展望などをお伝えしていきます。

Kashaの事業概要や運営状況

PitchBookやcrunchbaseの情報によると、以下のような会社概要になっています。

・設立年:2016年 

・推定患者数(ユーザー数):55,000+ 

・商品数:600,000+

・資本金:100万ドル

・企業HP:Kasha

ルワンダでスタートしたカーシャは、エンジェル投資家やインパクト投資家から150万ドルのシード資金を調達した。2020年後半、ケニアに進出した後、KashaはFinnfund、Swedfund、DFC、Mastercard Corporateから360万ドルのシリーズAを獲得した。Knife Capitalは、Finnfund、DFC、ティム・クーグル(元ヤフーCEO)、Beyond Capital Ventures、Altree Capital、Bamboo CapitalのBLOC Smart Africa Fund、Five35 Venturesの参加を得て、今回のシリーズBを主導した。

今回の投資について、5,000万ドルの汎アフリカ・ファンドであるナイフ・キャピタルの共同設立者兼パートナーであるKeet van Zyl氏は「現在の経済情勢の中で、女性主導でアフリカの大規模な一般市場セグメントにサービスを提供することや女性顧客へのサービスに強みを持つ、資本効率の高い高成長ビジネス(Kasha)に出会えたことは新鮮です。私たちは、この目的意識を持った献身的なチームとともに、アフリカ全土を拡大する旅のパートナーになることを楽しみにしています。」と述べています。

※参照URL:https://anza-africa.com/blog/839

※参照URL:https://www.crunchbase.com/organization/kasha

今後の展望

CEOのBichsel氏によると、Kashaは2020年後半にシリーズAをクローズして以来、年間経常収益が50倍に成長したと言われています。

また、創業当初は社会的インパクト・ビジネスとして広く誤解されていたKashaが積極的に収益を伸ばし続け、グローバル企業になり、投資家への強力なリターンを達成し、理想的には株式公開するつもりであることも述べられています。

ここ数年で経験した飛躍的な収益成長は、東アフリカの都市部や農村部のマスマーケット顧客からの高品質で手頃な価格の健康商品や日用品に対する高い市場需要によってもたらされたものです。

シリーズBで得た資金は、アフリカ全土への事業拡大と、事業の戦略的分野への投資に充て、当社の高成長軌道をさらに継続させる予定であることも宣言されています。

そのほか、ケニアとルワンダでの事業に加えて、最近南アフリカで登録されたKashaは、今年後半に同国と西アフリカでもプラットフォームを推進するために投資を利用する予定です。

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まとめ

Kashaは、ルワンダ発のスタートアップであり、女性の健康、衛生、およびセルフケア製品へのアクセスを改善するプラットフォームや組み込み金融サービスも提供する会社です。

その背景には、ルワンダの社会的な要因があります。ルワンダでは国会議員に占める女性の割合が6割超となるなど、政府主導で女性の登用が進み、官民の場で女性の活躍が増えています。

そのため、女性が積極的に政治や社会でリーダーシップを発揮する環境を整備しており、女性が男女平等に関するイニシアティブを取りやすい環境が整っています。

その中で、Kashaは女性の特有のニーズに焦点を当て、女性向けの健康やセルフケア商品を提供することで、これらの製品へのアクセス向上を目指しました。

特にアフリカ諸国では、女性が適切な健康製品にアクセスすることが課題でした。Kashaはこれを解決し、女性たちにより良い生活を提供することを目標に、医薬品や消費財のデジタル小売とワンマイル流通を提供することで、製品の効率的かつ迅速な提供を可能にしました。

Kashaの使命は、健康と家庭用品へのアクセスを改善することで、地域社会全体の生活水準向上に寄与することです。そこで、アフリカで女性の健康と福祉に焦点を当て、デジタルプラットフォームを通じて製品へのアクセスを効果的に提供することにより成功を収めています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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