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Waspito カメルーン発の遠隔医療プラットフォームのスタートアップを徹底解析

カメルーンに拠点をおくWaspitoの遠隔医療プラットフォームは、患者と医師をリアルタイムで接続し、医療相談、診断、処方箋の発行など、包括的な医療サービスを提供してます。ここでは、「Wespito」という会社を取り上げ、その強みや特徴、なぜ現地に受け入れられているのかなどご紹介していきます。

Waspito カメルーン発の遠隔医療プラットフォームのスタートアップを徹底解析

目次

  1. カメルーンの国内事情

  2. Waspito について

  3. Waspitoはなぜ成功したのか

  4. Waspitoの事業概要や運営状況

  5. まとめ

カメルーンの国内事情

まずはカメ―ルーンという国の概要や、その国の医療事情についてお伝えしていきます。

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カメルーンとは

カメルーンは中央アフリカに位置する国で、2022年時点での面積は約475,440平方キロメートル、人口は約2,791万人です。首都はヤウンデと呼ばれる都市で、主な民族にはバミレケ族、ファン族、ドゥアラ族がいます。

地理的には、ナイジェリア、チャド、中央アフリカ、コンゴ共和国、ガボン、赤道ギニアと国境を接し、国土は熱帯気候であり、南部の沿岸地域は熱帯雨林気候に分類されます。南部は年間降水量が4000mm以上で、雨量が多い地域ですので干ばつなどの心配はありません。

また、カメルーンには多様な見所があり、仮面や木彫りの彫像などが特徴的です。国土のほとんどが熱帯性気候のため、アフリカ内では農業国として知られています。

※参照URL:カメルーン基礎データ|外務省
※参照URL:「カメルーンってどんな国?」2分で学ぶ国際社会

カメルーンの医療事情

カメルーンの医療事情は、他のアフリカ諸国と同様にさまざまな問題が起きています。特に地理的な問題や紛争の多い地域では、病院や医療施設のアクセスや治療を受けることが難しい状況です。

国内での医療水準に関しては、ケニアやナイジェリアなどの比較的医療が進んでいる国々に比べると一般的に低く、疾患やケガによっては国内で治療を十分に受けることができません。

また、感染症のリスクも存在し、予防接種や注意が必要です。衛生状態やインフラも整っていないため、HIV陽性率やB・C型肝炎の発症率が高く平均寿命を下げる一因となっています。

一方で、近代的な私立病院も存在し、24時間対応でCT/MRIも可能な施設もありますが、経済格差が強いため、一般的な市民が気軽に利用できる医療インフラはまだ整備途上です。

※参照URL:カメルーンの感染症| 海外予防接種のつばめナビ
※参照URL:カメルーン:暴力事態下にある地域で医療が受けられることが重要課題
※参照URL:カメルーン - 世界の医療事情

 

Waspito について

次に、実際にWaspitoがどのような会社でどのようなサービスを提供しているのか、会社の成り立ちからアプリの特徴などをご紹介していきます。

Waspitoの成り立ち

創立者であるジャン・ローブ・ローブがWaspitoを設立したのは、COVIDパンデミックが世界的な保健衛生上の緊急事態となる直前の2020年初頭でした。 

ローブ氏は「ヘルスケアはすべての人のためのものであり、すべての人に手を差し伸べる必要があります。Waspitoのミニ・クリニックは、十分なサービスを受けていない人々とつながる最良の方法だと考えています」と述べているように、どのような人たちでも気軽に利用できるミニ・クリニックの拡大に当初は力を注いでいました。

しかし、ミニ・クリニックでは医療サービスが十分ではないと分かると、Waspitoは遠隔医療にそのアプローチを広げました。ジャン氏はそのことについても「重病の患者や、すぐに医者に診てもらわなければならない患者がいる場合、オンライン予約ではピンとこない。そのため、即座にビデオ診察ができるようにしたのです」と述べています。

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そのため、Waspitoでは病院と提携し、診察を受けた後は追加の診察料や登録をせず、最寄りの病院で治療を受けられるようにしています。このように、事前登録や診察の予約を伴うプラットフォームを構築する代わりに、Wespitoではユーザーが即座に医師とつながることができるようなシステムに改善されました。

※参照URL:https://techcrunch.com/2023/11/22/waspito-gets-seed-extension/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAK6YrauyhYxXQQsuScHuZfMpxvaso8rSFPRPGDqqo4GKIEjeDuockL5WXjbG0nz_v9Bt8Di2AYv7pBRhd3vGCgwkRo7pYuWR9EY0lYzSj9sJp81Y2ugwO_CDvG4QdzKqeQ9t5qiFaX1VD523R5e-pbMLwVKeDSPtCdqC0Kr0gU2r

Wespitoの特徴

まず、ユーザーはアプリをスマホにインストールするか、オンラインにてWespitoのサイトにログインします。すると、現在オンラインになっている医師のリストから医師を選ぶことができるようになっています。

そして、医師が医療検査を勧めると、提携している研究所の技術者がサンプル採取のために派遣されます。そのため、Waspitoは地元のいくつかの病院と提携し、必要に応じて提携病院にて検査が受けられるようになっています。

支払いに関しては、患者さんは診察の前に、保険を含む様々なオプションを通して支払いを行います。診察だけでなく、患者さんであるユーザーは匿名で様々な病気のサポートグループに参加し、自分に合ったアドバイスを受けることもできます。

Wespitoの医師が常にオンラインにいるという特徴は、地理的に診察を受けられない人たちや、移動手段がない人たちでも医師を利用しやすくなり、早期発見早期治療につながるというメリットがあります。

※参照URL:https://techcrunch.com/2023/11/22/waspito-gets-seed-extension/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAK6YrauyhYxXQQsuScHuZfMpxvaso8rSFPRPGDqqo4GKIEjeDuockL5WXjbG0nz_v9Bt8Di2AYv7pBRhd3vGCgwkRo7pYuWR9EY0lYzSj9sJp81Y2ugwO_CDvG4QdzKqeQ9t5qiFaX1VD523R5e-pbMLwVKeDSPtCdqC0Kr0gU2r
※参照URL:Why we invested in Digital Health Platform Waspito - Newtown Partners

 

Waspitoはなぜ成功したのか

ここでは、Waspitoがどのように認知され、その業績を伸ばしていったのかをお伝えしていきます。

Waspitoは「ヘルスケアのためのフェイスブック」

Waspitoが人々に受け入れられてきた背景には、インスタントビデオ通話を通じてユーザー(患者)と認証済み医師を直接つなぐ独自の健康エコシステムにあります。

事前登録や予約制を必要とする従来の遠隔医療プラットフォームとは異なり、Waspitoは医療への即時アクセスを優先し、ユーザーは利用可能な医師とリアルタイムでつながることができるようになりました。

このアプローチは、ユーザーの緊急医療ニーズに対応し、医療をすべての人に身近なものにしました。さらに、Waspitoは自宅からのサンプル採取と薬の配達を行い、クリニックに行かなくても自宅で全てが行える包括的なヘルスケアサービスを提供しています。

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この統合的なアプローチにより、Waspitoは「ヘルスケアのためのフェイスブック」と呼ばれ、そのユーザーフレンドリーなプラットフォームと、利用しやすいヘルスケア・サービスの提供を実現させています。

※参照URL:https://techcrunch.com/2023/11/22/waspito-gets-seed-extension/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAK6YrauyhYxXQQsuScHuZfMpxvaso8rSFPRPGDqqo4GKIEjeDuockL5WXjbG0nz_v9Bt8Di2AYv7pBRhd3vGCgwkRo7pYuWR9EY0lYzSj9sJp81Y2ugwO_CDvG4QdzKqeQ9t5qiFaX1VD523R5e-pbMLwVKeDSPtCdqC0Kr0gU2r
※参照URL:Cameroonian Health Startup Waspito Secures $2.5 Million Seed Extension to Expand Telemedicine Services - Empower Africa

患者さんが主体のWespito

Wespitoでは質の高い医療従事者の情報を入手し、モバイル端末で直接相談できるシステムを採用しています。そのため、Wespitoはそのアプリをソーシャルメディア・プラットフォームのように利用することができます。

例えば、患者さんたちは医療専門家や地方自治体のヘルスケアの機関から機密性の高い医療情報や教育フォーラムにアクセスすることが可能になっています。もちろん、プラットフォームのプライバシーにより、患者さんであるユーザーの既往歴や処方箋情報などは厳重なセキュリティシステムにより守られています。

今までは医療者側主体のサービスが多かったため、急な治療や検査を要するような場合、患者さんはただ諦めるしかなかったのが実情でした。しかし、Wespitoはそのような課題をユーザー主体にすることにより、カメルーンの人たちとの信頼を築くことができたのです。

処方箋医薬品と保険について

Wespitoでは医師はプラットフォームを通じて処方箋を発行し、検査画像を注文できるだけでなく、ユーザーはプラットフォームを通じて支払いを行い、Waspitoのパートナー薬局ネットワークを通じて薬を配達してもらえます。

また、Waspitoは、保険会社のAPI統合(※1)を通じて、患者さんのオンボーディング(※2)から保険金請求管理までの保険サイクルを管理しています。

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そのため、Wespitoでは既存の保険会社が自社のプラットフォーム上でデジタル保険商品を販売するための販売チャネルとして独自の地位を築いており、保険会社のコストを削減し、より安価な保険商品を提供することができるようにしています。

上記のシステムにより、保険に入れないようなユーザーにも保険加入ができるようにし、より多くのユーザーに診察や治療の機会を広げることができるようになりました。

これらの課題解決によって、Waspitoのソリューションは、ヘルスケアとヘルスケア・ファイナンスの提供を一般の人たちのより身近で手頃なものに改善させました。

※1:プログラム同士をつなぐ「インターフェース」 APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)」の略称です。 一言で表すと、ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェースのことを指します。

※2:オンボーディングとは、新メンバーが組織に馴染み、早期に力を発揮できるようにするために企業が実施する一連の取り組みのことをいいます。

※参照URL:Why we invested in Digital Health Platform Waspito - Newtown Partners

 

Waspitoの事業概要や運営状況

ここでは、Waspitoの事業概要や運営状況、そして今後の展望などをお伝えします。

Wespitoの事業概要

PitchBookやdealroomの情報によると、以下のような会社概要になっています。

・設立年:2020年 
・推定患者数(ユーザー数):65万人
・提携医師数:+950人
・診断数:+6万
・投資家数:14
・代表的投資会社:DPワールド、ニュータウン・パートナーズ、サヴィウ・ベンチャーズ、AAICインベストメント、アクシアン・ベンチャーズ、CFAOのHealth54
・会社ホームページ:http://www.waspito.com/
・総資金調達額:$8.2Mドル

遠隔医療サービスのパイオニアであるカメルーンの医療新興企業Waspitoは、DPワールドが主導する資金調達ラウンドで250万ドルのシード増資に成功しました。このラウンドには、ニュータウン・パートナーズ、サヴィウ・ベンチャーズ、AAICインベストメント、アクシアン・ベンチャーズ、CFAOのHealth54も参加しWespitoの資金調達総額は820万ドルに達しています。

 

この重要な投資は、Waspitoの成長イニシアティブ、特にフランス語圏全体に遠隔医療サービスを拡大するための燃料となるとされています。また、今年初め、Waspitoはコートジボワールに事業を拡大し、バーチャル診察とオフラインのミニクリニックを組み合わせたハイブリッド・モデルを導入しました。

ビバテック・アワードでアフリカのベスト・ヘルス・スタートアップに選ばれたWaspitoは、これまでにカメルーンとコートジボワールで65万人のユーザーを獲得し、950人の医師を雇用し、6万件の相談を促進したと主張している。

※参照URL:Waspito - Crunchbase Company Profile & Funding
※参照URL:Waspito company information, funding & investors | Dealroom.co
※参照URL:About Waspito inc - Health/Medical company in Cameroon | F6S

Waspitoの将来展望について

カメルーンの健康新興企業Waspitoでは、フランス語圏での成長に拍車をかけるため、ニュータウン・パートナーズ、サヴィウ・ベンチャーズ、AAICインベストメント、アクシアン・ベンチャーズ、CFAOのHealth54を通じて、DPワールドから250万ドルのシード資金を獲得しました。

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このスタートアップは、年初にコートジボワールに進出し、ハイブリッド・モデル(オンライン診断とミニクリニックの併用運営)を試験的に導入しているほか、昨年の270万ドルのシード・ラウンドに続く新たなラウンドで、セネガルとガボンを視野に入れています。

ミニクリニックの拡大に力を入れている背景には、アフリカのデジタル経済が拡大し続けているにもかかわらず、インターネットやスマートフォンのコストが原因で、アフリカのユーザーの大半はネットが使用できていないという課題を解決するためだと言われています。

Waspitoは、コートジボワールで試験的に行っているハイブリッド・モデル(オフラインの患者に対応するミニ・クリニックを設置)を展開するにつれ、プラットフォーム経由の診察件数が増加すると見込んでいます。

それを受け、コートジボワールの国営郵便サービスであるLa Poste Corporationの支店ネットワーク内にこれらのクリニックを設立し、サービスの拡大を狙っています。また、郵便局内では、これらの拠点に常駐する看護師の助けを借りて、ユーザーはバーチャルで医師とつながり、提携先によるその他の医療サービスを利用することができるようになっています。

※参照URL:https://techcrunch.com/2023/11/22/waspito-gets-seed-extension/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAK6YrauyhYxXQQsuScHuZfMpxvaso8rSFPRPGDqqo4GKIEjeDuockL5WXjbG0nz_v9Bt8Di2AYv7pBRhd3vGCgwkRo7pYuWR9EY0lYzSj9sJp81Y2ugwO_CDvG4QdzKqeQ9t5qiFaX1VD523R5e-pbMLwVKeDSPtCdqC0Kr0gU2r
※参照URL:Waspito - Overview

 

まとめ

一般的に、他のアフリカ諸国のように、カメルーンの医療施設は質が低いとされ、首都の病院への診察が求められることが多くあるとされています。また、医療インフラも低いカメルーンでは、平均寿命も低く日本では簡単に助かるような疾患やケガにより、毎日多くの人たちが命を落としています。

そのような課題の解決策として、Waspitoが生まれました。Waspitoはカメルーン発のヘルステックスタートアップであり、アフリカの医療エコシステムをアプリを通じて結びつけるサービスを提供しています。

WASPITOは、「ヘルスケアのためのFacebook(フェイスブック)」と呼ばれるように、誰にでも簡単にスマホを通して診断や治療を受けることができるシステムになっています。

遠隔医療に焦点を当て、スマホを使用して瞬時にユーザーを医師とつなぎます。また、診察に必要な検査もモバイルラボサービスにより、ユーザーの最寄りの病院と提携しています。また、支払いには独自の保険システムを作り、保険会社の仲介料金や手数料を無くすなど患者さん主体の医療システムを構築しています。今後はカメルーンだけではなく、フランス語圏の国々への拡大も計画しています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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