目次)
AIF2023投資フォーラムとは
アフリカ投資フォーラムとは、アフリカ開発銀行グループが主催する投資フォーラムであり、2023年は11月8日から10日まで、モロッコのマラケシュで開催されました。
投資フォーラムでは、アフリカの政府首脳、投資家、取引スポンサー、開発金融機関などが参加し、数十億ドルにのぼる農業ビジネス、運輸、エネルギーなどの重要セクターの取引を投資家に紹介するボードルーム・セッションが行われ、アフリカと日本の未来の発展に関するさまざまな意見が飛び交いました。
画像引用:https://www.afdb.org/en/news-and-events/events/2023-africa-investment-forum-market-days-64665
※参照URL:https://vimeo.com/862402092?share=copy
AIF2023の目的
開発銀行グループの代表であるアキンウミ・アデシナ総裁は、日本企業はアフリカの経済的潜在力から利益を得ていると述べ、アフリカの持続可能な包摂的成長を促進するために連携と投資拡大を呼びかけました。
特に、「特別ジャパンルームセッション」の中でアデシナ総裁は「巨大な設備会社であるコマツは、2020年にアフリカで10億ドルの収益を上げ、三菱商事と日立製作所は、20世紀初頭からアフリカでエネルギーに投資してきた。彼らはアフリカのことをよく知っており、投資を続けてきたのです」と述べています。
実際に、それらの影響を受け、アフリカの中小の新興企業に注目する新世代の日本のベンチャー・キャピタル・ファンドたちはアフリカ進出に拍車をかけています。また、アデシナ氏によると「アフリカにおける日本企業の数は、2010年の520社から2020年には900社に増加している」と言うように、ここ10年間におけるアフリカへの日本企業進出は飛躍的に伸びている状況です。
実際に、このセッションには、スタートアップ企業、投資ファンド、アフリカにビジネスチャンスを求める大手企業や機関など、40の日本企業の代表者80名以上が参加しました。
さらに、アフリカ開発銀行の日本、ブラジル、アルゼンチン、オーストリア、サウジアラビア担当エグゼクティブ・ディレクターである野本隆明が代表団に同行し以下のように述べています。
「強力な官民パートナーシップを通じて、アフリカにおける日本の投資はより速く成長するでしょう。そのため、現在のアフリカでは、その巨大な潜在力を活用するために、より多くのベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ・ファンドを必要としています。」
※参照URL:https://vimeo.com/862402092?share=copy
ヘルスセクター部門の実況レポート
ここでは、特別ジャパンルームセッションで実際にプレゼンテーションを行ったプレゼンターの方たちがどのようなことを話したのかお伝えしていきます。
AAIC
椿進むCEO率いるAAICは、東京に本社を置きアフリカ諸国への投資や、アフリカ大陸で活躍する企業へのコンサルティングサービスを提供している会社です。現在では、ナイロビ(ケニア)、ラゴス(ナイジェリア)、ヨハネスブルグ(南アフリカ)、キガリ(ルワンダ)などにも進出しています。
この会社は日本初のアフリカ専用ファンドを設立、アフリカへの豊富な投資実績をプレゼンテーションでもアピールしていました。また、投資だけではなく、市場調査、進出支援、代理店探索、M&A支援などさまざまな分野においてアフリカでの豊富なネットワークを活かし、活躍しているのも特徴です。
社名 | AAIC Investment Pte. Ltd. |
設立年 | 2013年 |
代表取締役社長 | 椿 進 |
取締役 | 3名 |
資本金 | $ 350,000 |
事業内容 |
|
椿氏は、AAICがルワンダで約200ヘクタール(500ベイカー)のマカデミアナッツ農園と加工事業を手がけ、現地従業員約350人を雇用しているスマート・ビレッジ・プロジェクトへの投資について説明しました。
また、プレゼンテーションでは、AAICはタンザニアの1,760ヘクタールの農園で1,000人の農民の生活水準を向上させ、同時に電気、無線インターネット、飲料水、ヘルスケアなどのインフラをコミュニティに提供(296人のタンザニア人)したことも報告されました。
その中で注目したのは、大人だけでなく子どもたちの多さでした。大人が2000人のタンザニアの小さな村でしたが、子どもの数は8000人以上おり、電気などのインフラもなく教育も十分に受けられていない状況でした。
そのため、AAICでは「スマートビレッジプロジェクト」と呼ばれる、ヘルスケアだけでなく、クリーンエナジー、子どもたちの学校設立なども視野に入れ活動を行っています。
※参照URL:https://aaicinvestment.com/ja/home-jp/what-we-do/
AA HEALTH DYNAMICS株式会社
原健太CEO率いるAA HEALT DYNAMICS社は、医療関係者への情報提供や妊婦さんへのエコー検査技術などのプロフェッショナル開発を通じて、世界中の医療の均展化を目指し情報技術、データエンジニアリング、ブロックチェーン技術などを活用し新興国の医療従事者のサポートを行っている会社です。
また、アフリカ人医師向けの医療教育プラットフォーム「MedicScan(メディックスキャン)」を提供しており、オンラインとオフラインを組み合わせた取り組みを行っています。特にアフリカでのヘルスケアKOLマーケティングに積極的に取り組んでいるこの会社は、ケニアにおいて医療関係者との強固なネットワークを持っていることが特徴です。
なお、AA HEALT DYNAMICS社は、日本からアフリカの調査、事業開発、製品デモ・マーケティング、ワークショップなどにおいて、日系企業の利用を歓迎しており、AfDx事業においては、スタートアップ企業と連携してアフリカの課題解決に貢献しています。
社名 | AA Health Dynamics株式会社/AA Health Dynamics K.K |
代表者 | 原 健太 |
設立 | 2022年 |
主な取引先業種 | 日系医療機器メーカー、日系製薬メーカー、コンサルティング会社、ヘルスケア投資会社、日系医療機器スタートアップ、医療機関/国立大学、私立大学/国際機関/開発援助機関、学術学会 等 |
事業領域 | 新興国における医療教育構築、新興国における医療マーケティング、新興国進出コンサルティング、ビジネス人材育成/新興国事業構想支援、医療データ分析/調査研究事業 等 |
原氏がプレゼンテーションの中で強調したのは「Continuois Medical Education」であり、それらを継続させるための「スポンサー・パートナー・投資」を呼びかけていました。この会社の強みは、ケニア国内の日本企業で唯一、医師免許更新のポイントを提供することができる。
また、2つのサービス(メディカルウェビナーとメディックススキャン)はどちらとも、ケニア政府から認定されている資格です。毎年360人以上もの医師たちが専門的なエコー技術を獲得し、今までに(2023年11月現在)3000人以上の医師がサービスを受け、産婦人科に来る妊婦さんたちの命を救っています。
原氏によると、現在では産婦人科でのエコー検査だけでなく、心臓エコー(2023年11月現在)や救急医療での緊急のエコー検査などにもその技術は拡大しているそうです。
※参照URL:AA Health Dynamics
※参照URL:AA Health Dynamcs株式会社 | Digima〜出島〜
※参照URL:AA Health Dynamics株式会社が経済産業省令和4年度補正予算『アフリカ等市場活力取り込み事業実施可能性調査事業;AfDX』に採択されました!
※参照URL:Case Study:AA Health Dynamics
※参照URL:AA Health Dynamics株式会社
株式会社Connect Afya
株式会社Connect Afyaは「アフリカの人々の平均寿命を先進国並みにする」というビジョンを掲げ、医療機器や検査ラボを提供している会社です。Afyaはスワヒリ語で健康を意味し、全ての人たちが医療・健康へアクセスできるようという願いを込めて名付けられました。
医療インフラがまだ脆弱なアフリカ地域において、必要とされる場所に必要なモノ・サービスを適切なタイミングで提供できる仕組みが必要でした。そのため、欠品が起こらず、病院・クリニックが必要な時に必要なものを手に入れられるように、Connect Afyaでは臨床検査ラボを運営し、そこでできた顧客網ネットワークを活用して、病院・クリニックへ必要な時に必要なモノを提供しています。
社名 | 株式会社Connect Afya |
代表者 | 嶋田 庸一 |
設立 | 2018年 |
本社所在地 | 兵庫県神戸市 |
CEOの嶋田氏は、プレゼンテーションの中で「Access Issue」ということを強調していました。なぜならば、アフリカのガンの生存率は、病気の診断が遅いために70%が救急医療の現場で亡くなってしまうからです。
そのため、ケニアでは大手民間病院や診療所と提携し、がん、HIV、Covid-19の医療機器や検査ラボを提供していることを紹介しました。また、Connect Afyaではそれらの課題に取り組むために、検査ラボの運営や医療機器の提供だけでなく、スタッフにはケニアの医療スタッフと提携し検査技師の育成にも(2021年から)乗り出しました。
※参照URL:Connect Afya
株式会社Spiker
株式会社spikerは、医療機器CTG(Cardiotocography)に関するデータ判読AI(人工知能)の研究・開発を行う企業です。CTGは、出産時に胎児の心拍と子宮の収縮を観測する医療機器であり、spikerはこれに関するデータ解析AIを開発しています。
この技術は、母子の健康をサポートし、特に途上国の分娩ケアにおいて新しいアプローチを提供しています。なぜならば、アフリカなどの途上国での周産期死亡(妊娠22週から生後7日までの胎児および新生児)率がかなり高いのですが、医学的知識や教育の知識があれば助かる妊婦さんがかなりいるからです。
社名 | 株式会社spiker |
代表取締役 | 笠井綾子 / 杉本大輔 |
設立 | 2020年 |
資本金 | 240万円 |
本社 | 千葉県千葉市 |
事業内容 | 医療機器・ソフトウェア製造業 |
許認可・登録 |
第二種医療機器製造販売業許可 医療機器製造業登録 指定管理医療機器製造販売認証取得 製品名:アラート モニタ 認証番号:第305AFBZX00083000号 |
CEO/共同創業者である葛西氏は、現在アフリカ諸国において医療従事者の少なさが深刻な問題になっていること、医療従事者がいたとしてもモニターなどの医療器具を適切に取り扱うことができないことが、胎児の健康に大きな影響を及ぼしていることを述べました。
そのため、SpikerはCTGを独自に開発し、データAIにて妊婦さんの異常を感知し、それをモニターに映し出せる医療機器を開発しています。笠井氏によれば、このモニターにより国際標準基準のデータと比較し、危険度によってレベル分けできるようになりました。
また、このAI搭載の最新アラートモニター(モデル名:4T1H)では、4台で年間2000人もの乳幼児の異常を検知できるようになっていると述べています。
※参照URL:https://kepple.co.jp/articles/financing/6tnlm46do5
※参照URL:https://www.spiker.jp/
※参照URL:https://www.nikkei.com/compass/company/jeSggB7B8aVMzXVM47hurC
※参照URL:https://www.spiker.jp/company
株式会社SOIK
株式会社SOIKは、デジタルヘルス領域において活動する企業です。主にアフリカの保健センターの産科サービスをデジタル化し、保健サービスの質を向上させる統合型ソリューションを提供しています。
その製品として、SPAQ(スパーク)と呼ばれるスマートフォンアプリがあり、これにより妊婦さんの健康状態や産科健診を効果的に管理でき、スマホアプリのナビゲーションに従うことで、アフリカの医療従事者は簡単にポータブル医療機器を使ったデジタル産前健診を行うことができます。
特に、コンゴ民主共和国においては、SOIKはSPAQを用いて最大5000名の妊婦に対するデジタル産科サービスを提供しています。
社名 |
株式会社SOIK(ソワック) コンゴ民主共和国 現地法人名:SOIK Corporation sarl |
代表者 | 代表取締役 古田 国之 |
設立 | 2019年 |
資本金 | 300万円 |
本社所在地 | 沖縄県 |
会社のHPによれば、SPAQはコンゴ民主共和国とシエラレオネで12の医療施設に導入され、すでに2000件を超えるデジタル産前健診が実施されており、Kwango州で3ヶ月にわたって実施された実証試験においては、従来の産前健診に比較して妊婦さんの満足度は99%となりました。
子宮外妊娠、前置胎盤、胞状奇胎、子癇前症、多胎など、SPAQによって見つかった異常は80を超え、使用した医療従事者からは28の命を救ったと報告されました。それ以外にも、妊婦さんが多く集まるようになり、導入先の医療施設の収入も42%増加したと報告されています。
CEOの古田邦之氏によると、日本とコンゴの母親の分娩時の死亡率を比較し、日本や欧米諸国とコンゴでは100倍もの差があり、それはコミュニティ内で起きていると述べていました。そのため、古田氏はまずコミュニティに目を向け、その課題に取り組んでいったそうです。
そのような状況の中で、SPACKは生まれました。アプリをダウンロードし、登録すれば妊婦さんのエコー画像や診断記録などが直接そのアプリから見られるようになっています。
現在そのアプリを使用しているコミュニティでは、他の所に比べて妊婦さんたちの利用度がかなり高く、その有能さを物語っています。
※参照URL:https://www.soik.co.jp/
※参照URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000081374.html
SORAテクノロジー株式会社
ミッションが「宙から人の生き方に変革を」をスローガンに、ドローンを中心とした最先端テクノロジーを駆使し、グローバルヘルス分野における社会課題の解決とエアモビリティ(※1)の活用に取り組んでいます。
SORAテクノロジーの特徴は、ドローンを中心に据え、ドローンインフラの構築・運用事業を展開していることです。特に新興国での検体や薬などの医療品の配送システムを提供しています。
特にこの会社では、マラリア対策事業で有名になりました。独自のドローンとAI(人工知能)を組み合わせたシステムを活用し、マラリアなどの蚊が媒介する感染症の撲滅を目指しています。
また、エアモビリティの活用が前提となる形で、交通の不便な地域や災害時においても迅速かつ効率的な物流が可能となるサービスの提供にも積極的に取り組んでいる会社です。
社名 | SORAテクノロジー株式会社 |
代表者 | 金子 洋介 |
設立 | 2020年 |
資本金 | 7,051万3,250円 |
役員構成 |
代表取締役 金子洋介 |
代表取締役 金子洋介 取締役 梅田昌季 取締役 大前創希 |
|
主要株主 | 金子洋介
DRONE FUND株式会社 Central Japan Seed Fund RheosCP1号投資事業有限責任組合 |
事業内容 |
|
副CEOの梅田氏は、プレゼンテーションの中で、同社のドローンとAIベースのソリューションを紹介しています。古田氏によると、SORAテクノロジーのドローンを使用し、水や食料などの物資や薬品やワクチンなどの医療品の運送から、マラリア病原菌を持っている蚊の駆除までドローンでできるようになっているそうです。
特にマラリアの駆除では、AIを搭載したドローンを使用し、実際にマラリア病原菌を持っている蚊の幼虫が好んで住みやすい水源をAIで見つけだし、スプレーのようにのべつまくなしに散布するのではなく、局所的に散布できるため、コストパフォーマンスの良い駆除ができると述べています。
それ以外にも、現地の人たちにドローンの操縦技術を教育することも実施しているそうです。また、コレラの監視や医療品の効率的なサプライチェーンなど、他の分野へのドローンベースのソリューションの展開も模索しているということでした。
※1 エアモビリティとは、空中移動手段を示すことばで、人や物資を空中で自由に移動できる技術、あるいはサービスを意味します。
※参照URL:SORA Technology株式会社の会社情報と資金調達 | NIKKEI COMPASS
※参照URL:SORA Technology 株式会社
まとめ
アフリカ投資フォーラム2023(AIF2023)は、アフリカ開発銀行(AfDB)など8つの開発金融機関によって共催されたイベントであり、アフリカの投資市場を促進するためのプラットフォームです。
2023年11月30日にモロッコのマラケシュで開催され、アフリカ開発銀行(AfDB)を中心に、8つの開発金融機関が共同で主催しています。フォーラムにはアフリカ内外の多様なステークホルダーが参加し、分野別に分かれ、さまざまな話題について話し合います。
日本からも、スタートアップ企業、投資ファンド、アフリカにビジネスチャンスを求める大手企業や機関など、40の日本企業の代表者80名以上が参加しました。特にサイドイベント「ジャパン・スペシャル・ルーム」では、投資フォーラムのタイトルでもある「日本とともにアフリカの成長を加速:スタートアップから大企業まで(Boosting Africa’s growth with Japan: From Start-ups to Major Companies)」を目的とした代表者がプレゼンテーションを行いました。
その中でヘルスセクターでは、日本を代表するスタートアップ企業が製品やサービス、現状の課題などをプレゼンし、スポンサーやパートナー投資などを求めました。