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アフリカの聴力ケアサービスのパイオニア、HearX Groupとは

健康と言えば、内臓疾患や感染症などに目を向けがちですが、耳の疾患については意外と見過ごしがちです。ですが、近年、聴力の課題に焦点を当てた「hearX」という南アフリカ共和国のスタートアップがアフリカ諸国で急成長を遂げています。ここでは、同社の概要やなぜアフリカ現地に受け入れられてきたのかなどをご紹介します。

アフリカの聴力ケアサービスのパイオニア、HearX Groupとは

目次)

  1. HearX Group: スマートフォンを活用した聴力検査の先駆者
  2. HearX Groupの事業内容と運営状況
  3. HearX Groupのサービス
  4. まとめ

HearX Group: スマートフォンを活用した聴力検査の先駆者

ここではhearX Groupとはどのような会社でそのコンセプトをご紹介していきます。

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hearX Groupとは

南アフリカ共和国を拠点とするヘルスケア関連ベンチャー・HearX Groupは、プレトリア大学を母体として設立されました。HearX Groupは、聴覚医療のあり方を変えるデジタル技術の商業化を目的として2016年に事業を開始し、耳鼻科の聴覚検査をスマートフォンで行えるアプリを提供している会社です。

この会社のアプリを使えば、聴力損失のスクリーニングなど、聴力に関する診断や治療までの全て行うことができます。新しい企業ですが、すでに10種以上のアプリが南アフリカ国内で広く使用され、米国でも耳鼻科学会との共同開発アプリが配布されています。

誕生の理由は、共同創始者と現在CEOであるニック・クッパ―氏の3人が、コンピューターサイエンスと聴覚学専攻というバックグランドから、簡単なデバイスを用い聴覚検査ができないかという考えから起業し企業を設立しました。

現在、HearX Groupの製品は医療機関だけでなく、教育機関など他の国々でも広く活用され、幅広いユーザー層に対応しています。

※参照URL:https://www.hearxgroup.com/
※参照URL:「モバイルヘルス革命」の震源地、アフリカのスタートアップ11選 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

HearX Groupのコンセプト

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HearX GroupのHPやLinkedInによると、HearX Groupは、「健康的な聴力の獲得と革新的な技術」を企業のスローガンに、誰もがどこでも利用できる補聴器を提供することを目標に尽力している企業です。

HearX Groupは2つの部門に分かれています。まず、B2B部門では、聴覚医療専門家向けに受賞歴のある臨床聴覚医療デバイスやアプリを提供しており、B2C部門では、従来の補聴器よりも80%安い価格で医療グレードである高品質の補聴器を提供しています。

また、HearX Groupはスマート・テック、人工知能、ビッグ・データを駆使することにより、世界中の難聴をスクリーニング(検査)、診断、治療までできるスマート・デジタル・ソリューション群を構築しています。

これにより、患者さんたちに従来より高品質なのにコストを抑えた価格対の補聴器を提供することが可能になり、アフリカ諸国だけでなく8年間で世界191カ国、200万人以上にサービスを提供することができるようになっています。

※参照URL:hearX Group | LinkedIn
※参照URL:https://www.hearxgroup.com/

 

HearX Groupの会社概要と運営状況

ここでは、この企業の会社概要やなぜ受け入れられたのかを説明していきます。

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hear X Groupの会社概要

hear X GroupのHPによると、以下のような会社概要になっています。

  • 設立年・開始年:2015年・2016年
  • ユーザー数:推定150万人
  • 提携国:191
  • 臨床検査数:2000000+
  • 代表的投資会社:Sphere Capital Holdings、HAVAÍC、Futuregrowth Asset Management、Bose Ventures
  • 会社ホームページ:https://www.hearxgroup.com/
  • 総資金調達額:$19.8Mドル

HearX Groupが成長を遂げた3つの理由

  • 利用しやすいサービス価格(手ごろな価格帯に設定)
  • コロナ禍を反映した利便性(自宅で行える検査やオンライン購入)
  • 販売・購入システムを民主化・分散化

HearXGroupは、米国での事業拡大を目指し、最近では830万米ドルのシリーズA資金調達を達成しました。

当初は臨床用デジタルオージオメータに焦点を当てていましたが、その後に補聴器販売の専門家であるオーディオロジストや、小売業者向けのリードジェネレーションのためのツールにも手を広げていきました。

最新の製品は、一般の人たちが購入しやすいように、消費者直販市場や店頭市場での販売を見据えた戦略を立てたことが功をなしたとみなされています。

今回の830万米ドルの資金調達ラウンドにより、HearX Groupは、米国での高級補聴器「Lexie Hearing」 の販売を開始しました。

消費者は、オンラインで高品質の補聴器を購入でき、自宅にいながら補聴器の専門家にオンデマンドで相談できるシステムも成功の一因になっています。

発売以来、「Lexie Hearing」は、国内第2位の薬局チェーンであるウォルグリーンと提携し、レキシー・ルーメン補聴器を全米38州でオンライン販売することにより、聴覚ケアへのアクセスを民主化・分散化し、従来の聴覚ヘルスケア業界の課題である、高品質だが高価格で、購入までに時間がかかる点を改善しました。

※参照URL:hearX Group - Funding, Financials, Valuation & Investors
※参照URL:SA e-health startup hearX Group raises $8.3m Series A funding round - Disrupt Africa

HearX Groupのサービス

この企業のサービスは聴力に関する問題に焦点を当てています。そのため、ここでは、まず聴力はなぜ大切なのか、そして、HearX Groupが提供している製品を3つのカテゴリーに分けてお伝えします。

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聴力は生活を豊かにするサポーター

雨の音やカフェのBGM、また小鳥のさえずりなど、私たちの生活は、音にあふれています。聴覚は私たちの何気ない生活を豊かにし、心身の健康にも重要な役割を果たします。

また、精神的だけでなく、肉体的にも聴力の低下は個々の生活において重要な身体機能の低下をもたらすことが判明しています。

例えば、聴力が低下すると、通常の状態の人と比較してバランスが悪化し、歩行速度が鈍り、持久力も低下するなど運動機能が低下します。これは、私たちは運動を行う際、視覚、触覚、聴覚の情報を統合して動きを調整しているからです。

そのため、聴力は活動範囲と密接に関連し、聴力に障害があると外に出て他人と交流する機会が減少する傾向があります。それに加え、耳の内耳には聴覚以外にも体のバランスを調整する前庭覚があり、内耳の障害は両方の感覚に影響を与える可能性もあります。

最近では、認知症リスクとの関係も密接であると言われている聴力は、今後アフリカ諸国だけでなく、世界中の人たちにも大きな課題となる健康問題です。

※参照URL:驚くべき、実は重要な耳と脳との関係
※参照URL:聴力を維持して運動能力の維持を!

聴力スクリーニング検査

hearScreen®は、標準純音聴力検査(測定)に使われる検査電子機器です。ヘッドホンをつけた状態でオージオメータという装置からさまざまな周波数の純音をさまざまな強さで聞いて測定する方法です。 

音の高さ(周波数)ごとに音の強さ(大きさ)を変えながら聞いて、どの程度聞こえたかを測定し、聞こえる最も小さな音の大きさ(可聴閾値)を調べます。

小さな子どもから大人まで使用できるこの製品は、世界中で複数の賞を受賞しており、現在39カ国で使用されています。

HearX GroupのhearScreen®は使いやすいデザインで、マニュアルや品質管理機能もその機材の中に自動的に組み込まれています。そのため、簡単な使い方を覚えるだけで、正確な聴覚スクリーニングを行えるようになっています。

また、もう1つの製品であるhear Digitsは、オンライン上で行えるヒアリングテストです。ヒアリングテスト後は、自分の聴力のグラフ化された結果を見たり、追加料金を払えばそのまま耳鼻科の診察が予約できたりするようになっています。

※参照URL:hearScreen® by hearX Group - Clinical hearing screening solution
※参照URL: hearDigits™ | A hearing screening widget for your website

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聴力診断テスト

hearTestとは、世界初のタブレット型純音オージオメータ(IEC 60645-1)です。ヘッド本を使用して行い、(8-16 kHz)の高音まで利用可能です。

その結果はリアルタイムでタブレットに反映されるため、リアルタイムで品質管理ができ、自分のグラフ化やチャートになった検査結果をそのままタブレットで見ることができます。

また、オペレーター機能や言語を選択できるため、初めて行う人でもその指示通りに行えば、簡単に聴力検査が行えるようになっています。

そのほか、hearXセルフテストキットは、非接触型聴力検査を可能にするタブレット型補聴器です。医療従事者であれば、院内診療、ドライブスルー、訪問診療でできる検査を遠隔サポート付きで提供することができ、補聴器のフィッティングを含む治療の提案も可能です。

※参照URL:hearTest by hearX Group - Pure tone clinical audiometer
※参照URL:https://www.youtube-nocookie.com/embed/xqlIMMjV81w?enablejsapi=1&html5=1&origin=*
※参照URL:https://www.hearxgroup.com/assets/documents/brochures/2023/CUS_STK_%20RSA_brochure_04012023.pdf

聴力保護検査

騒音の健康への影響は音の強さに比例し、65dBまではイライラや集中力低下、不眠などの心理的な影響が現れます。このレベルを超えると、血圧上昇や動悸など循環器系への悪影響が観察されるようになります。

騒音は近年の環境問題で最も顕著であり、その多くがこの音量に達しています。例えば、電車内のような90dBの騒音に長時間さらされると、聴力に損害が生じます。

通常、強い騒音にさらされると一時的に聴力が低下しますが、これは数時間から数日で回復することが一般的です。しかし、これが繰り返されると聴力は回復せず、慢性的な障害となります。

騒音による聴力障害は主に4000Hz以上の高音域に影響し、人間の会話域より低い周波数の障害は遅れて現れます。一度損傷した聴力は回復が難しいため、騒音環境にさらされる労働環境の人たちは、少なくとも年に1回は聴力検査を受ける必要があります。

hearTest OCC Healthでは、自分自身のスマホやタブレットと機材を繋ぎ、医療スタッフが行う診断を直接自分のデバイスで見ることができます。

その後に異常が予約を取っていれば、そのまま医師などの診察を受けることができるため、早期発見・早期治療がカギである聴力診断は、騒音環境で労働している人たちには必要不可欠なデバイスになっています。

※参照URL:騒音による聴力障害|家庭の医学|時事メディカル
※参照URL:hearScope™ | Smartphone Video-Otoscope

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まとめ

hearX Groupは、デジタルオーディオロジーの分野で活動する企業です。世界中の国々へ聴力損失のスクリーニング検査、診断、治療に使用されるデジタルオーディオロジーテクノロジーのデバイスを提供しています。

それだけでなく、hear X Groupは効率的かつ費用対効果の高い聴覚ケアの実現を目指し、私たちが、どこでも利用できるスマートフォンやタブレットを使用して、手頃な価格で聴覚ケアへのサービスを提供しています。

近年では、アメリカのボースベンチャー企業からの投資により、手ごろで高品質な補聴器の販売から調整までが低価格でできるようになり、全米でオンライン販売できるようになりました。

現在でも191か国の国々と提携した製品の提供を行っていますが、今後はさらに提携できる国を増やせると期待されています。



増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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