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新興国

アフリカの医薬品供給に安心と効率化をもたらすオンライン薬局最前線

アフリカはアジアに次ぐ巨大市場として注目されており、日本企業からの関心も増加傾向にあります。今回はその背景を説明しつつ、アフリカ市場で現在活躍しているケニアのスタートアップ企業・オンライン薬局の「マイダワ(MyDawa)」に焦点を当てて事業概要やポリシー、運営の状況などをご紹介いたします。

アフリカの医薬品供給に安心と効率化をもたらすオンライン薬局最前線

目次)


  1. MyDawaとは
  2. MyDawaの事業概要・運営状況など
  3. まとめ

 

MyDawaとは

MyDawaとは、ケニアのヘルスケアプラットフォームです。ここでは、MyDawaの事業概要やその特徴、運営状況や資金調達額などをご紹介します。

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MyDawaとはオンライン薬局

MyDawaはケニアに本社を置くオンライン薬局およびヘルスケアプラットフォームです。この会社は、患者さんが医薬品やヘルスケア製品をオンラインで注文し、自宅へ配達するサービスを行っています。

従来のアフリカ諸国のオンラインヘルスケアプラットフォームでは、処方箋の模倣品などが多く販売され、患者さんが安心して購入できないという課題がありました。

そこで、このMyDawaは医薬品の品質と安全性に重点を置き、品物が正規の供給源から提供されることを保証し、薬局、医師、薬剤師とのパートナーシップを通じて、効率的な医療サービスを提供しているところが特徴的です。

処方箋だけでなくヘアケア用品や美容日なども販売しており、患者さんに医療アドバイスや製品情報も提供しているため、オンラインでも患者さんがどのように処方箋や製品を扱えばいいのかも工夫されています。

また、サービス料、取引コスト、配送コストを一切請求しないため、手頃な価格で医薬品を入手することができ、クレジットカードだけでなくM-pesaなどのモバイルマネーも対応可能なサービスやサイト上で処方箋をアップロードし承認されると購入できるシステムになっています。

※参照URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/dc0d01678915e238/20180042.pdf(p56参照)
※参照URL:About Us
※参照URL:東西アフリカの最新EC事情ーB2B/B2C/C2C ECの実態ー

MyDawaのポリシー

MYDAWAはケニア政府の正式な許可を得た初めてのオンライン薬局であり、首都のナイロビを拠点にケニア全土で事業を展開している会社です。

 「利用者が快適かつ継続して購入できる品質やルートの確保」という使命を確実に達成するため、4つの柱:品質・手頃な価格・便利さ・プライバシーの重視を中心に構築されています。 

まず品質については、MYDAWAブランドの製品は正規なルートを通じ、模倣品でなく品質の高い製品だけを扱えるように、厳正な検査や基準の元に仕入れを行っています。

価格帯においては、MyDawaのプラットフォームで販売されるすべての製品において、通常の小売価格より20%低い価格を設定しそれに沿って販売しています。

また、便利さに関しては、すべてのサービスは携帯電話からアクセスでき、4時間以内に商品を直接お届けでき、決済手数料はかからず、ナイロビ市内であれば無料で配送できるようになっています。 

さらに、プライバシー保護のためにMyDawaでは完全な機密保持サービスを提供しており、製品は機密保持のため、密封された安全なパッケージで配送されています。

このように、MyDawaはテクノロジーとヘルスケアを融合させることにより、デジタルシステムの透明性によってサービス提供の品質基準を高めつつ、効率性を得ることを可能にしました。

※参照URL:MYDAWA Quality Statement

MyDawaの事業概要・運営状況など

ここでは、MyDawaの具体的な事業概要や運営状況、これまでの資金調達額などをご紹介します。

MyDawaの事業概要・運営状況

JTROやMyDawaのHPの情報によると、以下のような会社概要になっています。

・設立年:2017年 
・ユーザー数:8万人を突破(2021年12月時点)
・アイルランドのPEファンドから2017年に500万ドルを調達
・会社ホームページ:MYDAWA

・総資金調達額:2800万ドル

運営状況に関しては、2016年にスタートしたMyDawaは、電子薬局からオンラインや対面での相談、拡大するウォークイン薬局やヘルスセンターのネットワークでの検査サービスなど多角化するようになりました。

自社ブランド製品も発売しており、テレヘルスからフルフィルメントに至るまで技術インフラを開放し、今後も健康分野の他事業の規模拡大を支援していく考えを表明しています。

また、MyDawaはすでにケニア最大のクリニック・チェーン数社と契約を結び、ウガンダのガーディアン・ヘルス社を買収しています。

これらの事業展開により、マイダワへの投資は、現地で生産された価値ある価格の消費財やサービスに投資することで、この拡大する需要に応えることできると自信を持っています。

※参照URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/dc0d01678915e238/20180042.pdf(p56参照)
※参照URL:Kenya’s MyDawa aims to be an all-in-one health platform backed by $20 million funding | TechCrunch
※参照URL:MyDawa Company Profile: Valuation, Funding & Investors | PitchBook
※参照URL:Kenyan e-pharmacy startup MYDAWA banks $1.2m grant funding from Gates Foundation - Disrupt Africa

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資金調達額

MyDawaは過去4回で総額2,800万ドルの資金を調達しています。資金調達の内訳は次のようになります。

・1回目の資金調達はPrivate Equity(PE:未公開株式)2017年3月28日
・2回目の資金調達はAAIC Africa Healthcare Fund/Indigo Partnersから2019年5月7日に300万ドル
・3回目の資金調達はBill Gates and Merinda Fundationから2021年11月30日に120万ドル
・4回目の資金調達ラウンドは2023年7月3日のAlta Semper Capitalから2000万ドル

特にBill Gates and Merinda Fundationからの資金調達は、新規感染予防のための介入策の改善とHIV治療の簡素化を通じて、世界中でHIV感染の減少を加速させ、命を救うというゲイツ財団のポリシーを反映している会社として、PrEP(HIV感染予防薬)のオンライン提供を拡大するために、MyDawaが選ばれました。

また、Alta Semper Capitalからの2,000万ドルの資本注入は、MyDawaの成長を加速させ、今後アフリカのヘルスケア業界における地位を確固たるものにすると期待されています。

COO兼パートナーのザカリー・フォンド(Zachary Fond)氏もMyDawaの投資について、現地で生産された価値のある製品やサービスに投資し、アフリカ全土でテクノロジー主導の健康公平性を高めることにより、増大する需要に応える目的の投資であると語っています。

※参照URL:Private Equity Round - Mydawa - 2017-03-28 - Crunchbase Funding Round Profile
※参照URL:Mydawa - Funding, Financials, Valuation & Investors
※参照URL:MyDawa - Company Profile - Tracxn
※参照URL:Kenyan startup MYDAWA launches telehealth platform for HIV prevention - Disrupt Africa
※参照URL:Alta Semper Capital Invests 20$ Million in Kenyan Primary Care and Digital Healthcare Platform MYDAWA

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まとめ

MyDawaは、ケニアを拠点とするアフリカ諸国で国の認可が下りた正式なオンライン薬局および医療テクノロジー企業です。この会社は、デジタルプラットフォームを活用して、医薬品や健康製品を利用者に提供し、医療ケアへのアクセスの改善に貢献しています。

まず、オンライン薬局では、アプリやウェブサイトを通じて医薬品や処方箋を注文できるようになり、購入だけでなく利用者への健康情報もアプリから見ることが可能になっています。

また、MyDawaの特徴は製品の品質と信頼性に重点を置いているところです。模倣品ではない正規の医薬品を供給し治療の効率があがるようになっています。

そのため、近年ではさまざまな企業やファンドから資金調達を獲得しており、医療ケアへのアクセスを向上させるためのイノベーションモデルとして注目されています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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