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アフリカ

救急車版Uberから見るアフリカの医療事情

海外の大都市では近年救急車の利用コストが高くなり、Uberを救急車代わりに使う人が増えています。アフリカでもその利便性の良さから、ケニアなどでUber救急車の利用が拡大しています。ここでは、Uber救急車とはどのようなものなのか、アフリカでの利用状況、収益性などをご紹介します。

救急車版Uberから見るアフリカの医療事情

目次)

  1. 「救急車版Uber」とはどのようなものか
  2. アフリカで救急版Uberを行うメリット
  3. アフリカの医療プラットフォームへの各国の投資状況
  4. まとめ

 

「救急車版Uber」とはどのようなものか

まずは実際に「救急車版Uber」がどのようなものなのかお伝えしていきます。

「救急車版Uber」はライドシェアサービス

「救急車版Uber」とはその名の通り、Uberなどのライドシェアサービス(配車サービス)を利用して緊急の医療状況で患者を病院に運ぶサービスです。ドライバーは土地勘もあり人数も安定しているため、ケニアなどアフリカ諸国では近年急速に発展し、緊急時の医療輸送を行うケースが増加しています。

特にケニアでは、Caitlin DolkartとMaria Rabinovichによって設立されたCapusule社の「Flare」というアプリが提供されており、現在はテスト段階ですが将来的には医療機関でUber車の手配ができるようになると期待されています。

※参照URL:Flare社ホームページ 
※参照URL:Uberの救急車版配車サービスFlareがアフリカはケニアの患者の命を救う | ウガリスト

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アフリカ版Uber救急車:「Flare」の仕組み

Flareは救急車を直接所有せず、病院と提携しているケニアのUber救急車のプラットフォームです。2019年12月時点では、ナイロビには200台以上の救急車があり、そのうち56台がFlareに参加しています。

事故発生時にFlareのアプリから連絡をすると、Dispatcherと呼ばれる担当者が現場の状況に応じて適切な救急車を手配し、急患への対応を行います。この判断のためにDispatcherには医療従事者が採用されており、それぞれの患者さんに見合った病院へ適切なルートで行けるように運転手に指示が行われます。

また、ケニアのUberのドライバーは事故のリスクが高いわりに、Uberだけでは収入が限られています。Flareはそこに目を付け、B2Bのサブスクリプション制度を導入し、Uberやセキュリティ会社にそのサービスを提供しています。

FlareはUberと契約し、Uberに対してサブスクリプション料金を支払うことで、ドライバーがいつでも救急車にアクセスできるようにし、ドライバーも収入が上がり、Flareも安定したUber救急車の供給ができるようになっています。

※参照URL:ケニアの救急車配車プラットフォーム(Uber for Ambulance)|AAIC Japan

 

アフリカで救急版Uberを行うメリット

ここでは、なぜ今アフリカで救急版Uberに注目が集まっているのか、その背景やメリットをご紹介します。

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到着までの時間が短縮できる救急版Uber

日本でも救急車の到着時間などは時々話題になっていますが、アフリカでは日本の比でなく、救急車が患者さんを乗せて病院に到着するのに時間を要し、救命率に影響を与えています。

まず、アフリカ諸国全土でそうであるというわけではないですが、一般的に救急車が患者さんのところに到着するまでには、2時間から3時間かかることが当たり前と言われています。そして、患者さんを乗せても、その場所から病院まで行くのにさらに時間がかかることがほとんどです。

その背景には、アフリカ諸国のインフラの不整備のために渋滞しやすいことや、救急車は国で管理、運営されているわけではないことから救急車の数が患者さんの数に対して不足していたりとシステムが上手く組織化されていない問題があります。

また、スムーズに患者さんの所に着いても、救急車自体に道路ナビや地図がなく、病院にたどり着けないなどの問題も生じています。

その点、救急版Uberであれば、ドライバーたちは土地勘もあり、渋滞などの情報も共有しているため、病院まで従来の救急車よりも迅速に患者さんを病院まで運ぶことができます。

※参照URL:Uberの救急車版配車サービスFlareがアフリカはケニアの患者の命を救う | ウガリスト
※参照URL:アフリカビジネスを紐解く「2つの視点」--アフリカ特化ファンドAAICの椿進氏に聞く - (page 2)

アプリから手軽に呼べる救急版Uber

救急版Uberでは、通常のUber同様にスマートフォンアプリを使って手軽に呼び出せるため、患者さんの体調が更に悪化する前に医療サービスを受けることができます。

例えば、ナイロビでは約100台ある救急車にGPSを付けて、配車プラットフォームを構築しています。そのため、患者さんの最も近くにいる救急車を手配し、症状に合った救急の病院の空き状況を確認して搬送することができるようになりました。

また、病院にある救急車をGPSでネットワーク化し、救急医にも同様の登録をしてもらうことにより、電話がきたら一番近い救急車に発動命令を出して、Googleマップで場所を特定し、産婦人科、整形外科と、それぞれの患者さんの状況に見合った医療機関に搬送するサービスを提供できるようになっています。

※参照URL:ケニアの救急車配車プラットフォーム(Uber for Ambulance)|AAIC Japan
※参照URL:アフリカ 先端テクノロジーが「カエル跳び」的に段階を超えて拡大

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救急車を呼ぶコストも抑えることが可能

アフリカの救急車配車サービスでは、Uberのようなアプローチが取られており、コスト削減が重要視されています。特に、ケニアでは救急車の呼び出し費用(患者さんが負担する費用)が35〜85ドルと高額であるため、利用できる人が限られ、一般市民ではなかなか救急車の利用ができません。

そこで、具体的なコスト削減策として、救急車配車プラットフォームの導入を行って運営コストを抑えることが推進されています。現在はサブスクリプション制度を導入して救急車として利用されることにより、Uberのドライバーの収入も上がるように考えられています。

また、アプリを介した効率的な運用によってコストを削減し、効果的なサービス提供を実現させようとしています。アプリさえダウンロードできれば、中間業者を介さずそのまま適切な医療機関へ運んでもらえるため、呼び出し費用もかからずに済みます。

※参照URL:ケニアの救急車配車プラットフォーム(Uber for Ambulance)|AAIC Japan
※参照URL:Uberの救急車版配車サービスFlareがアフリカはケニアの患者の命を救う | ウガリスト
※参照URL:ケニアの救急車配車プラットフォーム(Uber for Ambulance)

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アフリカの医療プラットフォームへの各国の投資状況

救急車版Uberの投資はFlareが有名ですが、Flare意外にもさまざまな海外資本のスタートアップ企業が医療用プラットフォームを作っています。ここでは、その一部分をご紹介いたします。

救急車版Uber

アフリカ、特にケニアでUberのような救急車サービスなどの医療に関連した投資状況が活発化しています。

ここでは、Flareを有名にした出来事を紹介します。2019年1月15日、ナイロビでテロが発生しました。ケニアを含め、多くのアフリカ諸国ではこういった緊急事態に対応する集権化された組織が存在しません。

しかし、Flareサービス利用者の電話をきっかけに、テロ発生後12分で1台目の救急車が到着、1時間以内には20台が現場に集結しました。その際には、オーストラリア大使館がFlareの救急車に待機場所を提供し、警察もFlareに情報を共有することで対応しました。

ケニアのスタートアップ企業は、医師不足やインフラ設備の不備などの問題をふまえ、救急車版Uberのようなプラットフォームを開発し、患者さんの状況に合わせた適切な救急車を効率良く派遣しています。

こうした取り組みは、民間企業が救急車サービスを管理し、緊急医療のニーズに効果的に対応しているアフリカの革新的なアプローチを反映していると考えられます。

※参照URL:ケニアの救急車配車プラットフォーム(Uber for Ambulance)|AAIC Japan

海外企業資本の医療専門プラットフォーム

救急車だけに限らず、医療専門プラットフォームへの投資も活発になって来ています。例えば、救急車等の緊急車両のマッチングにより、救急車が来るまでの時間を短縮するFlare。

医師を派遣して、定期検診から最先端治療まで、患者さんのあらゆるニーズに応えるTIBU Health。

慢性疾患の遠隔診療と当該データの活用により保険コストを低減するAntara Healthやメンタルヘルスのオンラインセラピーを提供するWaziなど、さまざまな企業がヘルスケアに投資し、ケニアの人たちの健康を守っています。

※参照URL:TIBU Health
※参照URL:Antara Health
※参照URL:Wazi

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まとめ

救急車版Uberというのは、ライドシェアサービスを利用して緊急の医療状況で患者を病院に運ぶサービスです。欧米などでもシェアが伸びてきていますが、アフリカ諸国でも、コスト面やアプリで手軽に呼べる便利さから徐々に普及してきています。

特にケニアでは「Flare」という救急版Uberの会社の台頭が顕著であり、Uberドライバーとサブスクリプションを結び、コスト削減やシステムをスムーズに行うための努力をしています。

救急車だけでなく、ケニアでは医療サービスプラットのスタートアップ企業も次々と生まれており、ケニアの人々の健康に貢献しています。

特に、アフリカにおける救急車のUber型配車プラットフォームは、多くの企業は行政を介さずに行うことができるサービスとして注目され、今後も民間企業によって展開されており、投資の対象として期待されています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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