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アフリカで増えゆく生活習慣病/虚血性疾患

アフリカでは近年、生活習慣病が増加しており、特に循環器疾患の一種である虚血性心疾患が顕著です。このことから現地では心臓カテーテルに関連する治療や医療機器の需要が増しておりマーケットの飛躍的な拡大が見込まれています。ここでは生活習慣病(虚血性心疾患)とはなにか、背景にはどのような要因があるのかなどご紹介します。

アフリカで増えゆく生活習慣病/虚血性疾患

目次)

  1. 生活習慣病とは
  2. アフリカで増えている虚血性心疾患
  3. 心臓カテーテルに関する日本企業の需要やアフリカ市場への展望
  4. テルモ株式会社とアフリカ
  5. まとめ

生活習慣病とは

日本でもよく耳にする生活習慣病ですが、まずは、それらが具体的にはどのようなものかお伝えします。

生活習慣が原因で起こりうる病気

生活習慣病とは食習慣、運動習慣、休養、喫煙などの生活習慣がその発症や進行に関与する病気であり、具体的な病名としては糖尿病、脳血管疾患、心臓病、脂質異常症、高血圧、骨粗しょう症などが含まれます。

それらの症状はどれも健康寿命とも深く結びついているため、生活習慣病の人が多くなれば、国民医療費にも大きな影響を与えることとなります。

生活習慣病の原因はさまざまな生活習慣が組み合わさっています。その中でも、偏った食事や過剰な食事など不適切な食習慣、運動不足、喫煙、過度な飲酒またはストレスなどが大きな要因となっています。

そのため、生活習慣病にならないためには、ライフスタイルの見直しや健康的な食事、適度な運動、禁煙、適量のアルコール摂取、ストレスの適切な管理が大切です。

※参照URL:生活習慣病を予防しましょう - 健康づくりに関する情報
※参照URL:生活習慣病予防 |厚生労働省

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メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は生活習慣病の原因の1つ

不健康な生活習慣の積み重ねは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の原因ともなります。メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった状態であり、心臓病や脳卒中などのリスクが高まる病態を指します。

特に内臓脂肪型肥満が特徴で、脂質代謝異常、高血圧、高血糖のいずれか2つ以上が同時に存在すると診断されます。このような状態は、代謝の安定性が崩れ、体重増加や脂肪、血糖値の異常が生じることを示します。

日本では、厚生労働省などが診断基準を定めており、内臓脂肪の蓄積がある状態で、血圧、血糖、血清脂質のいずれか2つ以上が基準値から外れている場合にメタボリックシンドロームと診断されます(参照URL②)。

※参照URL①:メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:Metabolic Syndrome)
※参照URL②:メタボリックシンドロームの診断基準 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

アフリカで増えている虚血性心疾患

アフリカでは生活習慣病の中でも、特に循環器疾患の一種である虚血性心疾患が増加しています。ここでは、虚血性心疾患とはどのようなものなのかから、その原因や背景を説明します。

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虚血性心疾患とは

虚血性心疾患とは、心臓の血管が動脈硬化や血栓によって狭くなり、心臓に十分な酸素や栄養が供給されないことで「虚血」状態となり、それが運動やストレスによって前胸部に痛みや圧迫感などを引き起こす疾患です。

一般的に「心筋梗塞」と「狭心症」は、共に「虚血性心疾患」としてまとめられます。そのまま虚血の状態が長く続くと、心臓を収縮させる心筋の動きが悪くなるので、心臓のポンプ機能にも影響が出て息苦しくなる等「心不全」の症状があらわれてきます。

重症になると血圧が下がり危険な不整脈が出ることも多く、血圧が下がるためショック状態となり、全身が虚血状態になってしまうこともあります。

また、心筋の「心臓の電気信号」を伝える働きにも障害をきたし、心室細動という命にかかわる不整脈を起こす可能性もあるため、できるだけ早く医療機関で適切な治療を受けることが大切になってきます。

※参照URL:虚血性心疾患|病気について
※参照URL:虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の症状と治療法 | 心不全がよくわかる 心不全.com | 日本メドトロニック株式会社

健康問題は感染症から生活習慣病へ移行

近年のアフリカ諸国の健康問題は、これまでのマラリアなどの感染症に加えて、他の先進国と同様に生活習慣病へと変化してきており、生活習慣に起因する健康課題が強く叫ばれています。

特に、虚血性心疾患はケニア共和国を筆頭にさまざまなアフリカ諸国で増加傾向にあり、ケニアにおける2006年の死亡原因は感染症によるものがほとんどでしたが、2015年の調査では虚血性疾患や脳血管疾患の割合が20~30%増えており、まさに現在、深刻な問題になっています。

虚血性心疾患は、世界的に非感染性疾患(NCDs)の重要なサブセットであり、これらの疾患に効果的に取り組むための生活習慣の改善と健康教育の重要性が再認識されています。

※参照URL:モーリシャス - 世界の医療事情
※参照URL:ビッグデータで健康は改善できるのか? | academist

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アフリカの虚血性心疾患増加の背景

アフリカでは貧富の差が激しいことで有名ですが、虚血性心疾患はとくに裕福層で起きており、この増加は、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足などの生活習慣要因が関連していると考えられています。

虚血性心疾患は飽和脂肪の摂取量の増加など、生活習慣の変化が大きな影響を与えています。そのため、アフリカ諸国では特に、油を使った食事が好まれることから食事による影響が大きいです。

また、ケニアでは、脳卒中や虚血性心疾患は死亡要因の上位に位置していますが、総医師数が少な く、当該領域の専門医の数が限られているため、治療できずに早く亡くなってしまったり、障がいが残ってしまったりして、死亡率をあげている背景があります。

現在、アフリカ各地での健康構想や研究が進められており、急性期の循環器病に対する診療の質の向上や早期発見、適切な治療、リハビリなどが重要視されています。

※参照URL:https://japan-who.or.jp/wp-content/themes/rewho/img/PDF/library/071/book7202.pdf
※参照URL:WHO reveals leading causes of death and disability worldwide: 2000-2019

 

心臓カテーテルに関する日本企業の需要やアフリカ市場への展望

一般的に、心血管疾患患者の増加により、心臓カテーテル市場は大幅な成長が見込まれます。ここでは、心臓カテーテルと虚血性心疾患との関係や、日本企業の需要、実際にどのような日本企業が心臓カテーテルを扱っているかなどをご紹介します。

虚血性心疾患と心臓カテーテルの関係

虚血性心疾患は心臓の血管である冠動脈が狭窄や閉塞されることで、心臓筋への血液供給が不十分になる疾患です。心臓カテーテルは、冠動脈や心臓内部に柔らかい管を挿入する検査や治療法の一つです。

虚血性心疾患に心臓カテーテルが使われる場合には、冠動脈の狭窄や閉塞により心臓筋への血液供給が不足するため、動脈に挿入した心臓カテーテルから、冠動脈内にガイドワイヤを通過させ、バルーン(風船)やステント(筒状のステンレス網)によって狭窄や閉塞を拡張させ、血流を回復させます。

心臓カテーテルによる治療のため、傷がほとんど残らず、入院は3泊4日が標準で、速やかな日常生活への復帰が可能です。

また、心臓カテーテル検査の場合には、心臓カテーテルを血管から挿入し、造影剤を使って冠動脈を観察するために使用されます。治療でも検査でも定期的に使用される心臓カテーテルは、アフリカ諸国においても、虚血性心疾患が増加したことにより、現在ではその需要が以前よりも増しています。

※参照URL:虚血性心疾患|病気について
※参照URL:虚血性心疾患

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心臓カテーテルを扱っている日本企業一覧

現在日本では最低でも78の企業(参照URLリスト)がカテーテルの製造や販売を行っています。以下はその一部です。

  1. テルモ株式会社
  2. ニプロ株式会社
  3. 日本光電工業株式会社
  4. アボットジャパン合同会社

上記の他にも、74以上の日本企業が現在さまざまな種類のカテーテルの生産や販売を取り扱っており、日本国内のカテーテルを使用する治療をまかなっています。

今後はその生産や販売を母体数の大きなアフリカ諸国の市場にも拡大することができれば、日本企業の需要も飛躍的に伸びるのではないかと考えられます。

※参照URL:カテーテル製造・メーカーの会社・企業一覧(全国)|Baseconnect

 

テルモ株式会社とアフリカ

テルモ株式会社(Terumo)は、日本に本社を構える医療機器メーカーであり、100年以上の歴史を持ち、世界160以上の国と地域で事業を展開し、医療を通じて社会に貢献するという企業理念のもと、患者さんの心と身体の負担低減を追求し、確かな品質とテクノロジーを追求している会社です(参照URL①)。

また、同社は血液センターと提携し、血液関連の製品を供給しており、製剤プロセスの効率化に貢献していることから、近年ではアフリカで安全かつ持続可能な血液供給を目指して活動しています(参照URL②)。

特に「テルモBCT」はCoBA(Coalition of Blood for Africa)の結成を提唱・主導し、アフリカで安全な血液をより多くの患者さんに届けるための活動に尽力しています。

例えば、アフリカのガーナ共和国を舞台に、安全な輸血用血液の確保に向けてJICAと協力して取り組んでいるように(参照URL③)、同社はアフリカで献血の必要性を啓発し、献血を増やす活動を行っています。

そのほか、ヨーロッパ、日本を含むアジア、アフリカ、南米の4大陸で実施されたグローバルな臨床研究である、薬剤溶出型冠動脈ステント「アルチマスター」(Ultimaster)に関する臨床研究「e-ULTIMASTER」の発表も行っています(参照URL④)。

※参照URL①:会社概要 | 企業情報 | テルモ
※参照URL②:テルモBCT、アフリカでの安全で持続可能な血液供給を目指し、CoBA(Coalition of Blood for Africa)を発足
※参照URL③:“One TERUMO”で アフリカの医療の未来をつくる。
※参照URL④:テルモ、薬剤溶出型冠動脈ステントに関する37,000人規模の臨床研究結果を発表

 

まとめ

アフリカでは近年、生活習慣の変化に伴い、虚血性心疾患などの生活習慣病が増加しており、医療問題も従来の感染症から、虚血性心疾患に移行しています。

虚血性心疾患とは、心臓に血液が十分に供給されない状態であり、心臓カテーテルを使用し、検査や治療や検査をおこないます。

心臓カテーテルは、虚血性心疾患の治療に用いられる医療機器であり、血管内に挿入されることで心臓の状態を評価し、必要に応じて治療を行います。

日本では虚血性心疾患は適切な治療や検査のおかげで直接死に至る疾患ではありますが、かなりの人たちが日常生活に戻れています。

しかし、アフリカ諸国では、医師の技術不足や医療機器の不足が課題となり、生活習慣病による虚血性心疾患の増加に対応するために、心臓カテーテル治療の重要性が高まっています。

日本では昔からカテーテルを製造・販売している企業は多く、海外とも連携し、さまざまな検査や治療に日本製品が使われています。アフリカでのカテーテルの普及はまだまだ低いため、今こそその市場を広げるチャンスだと考えられています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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