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アフリカビジネス

ブロックチェーンが実現するアフリカの可能性

近年、通貨取引などで活用され始めたブロックチェーン技術は、取引の透明性、セキュリティ、効率性等を高めることから経済成長の促進や社会問題の解決などに貢献する多くの利点をもたらすと言われています。ここではブロックチェーンとは何なのか、その仕組みや現状と課題、需要、どのように活用されていくかなどを解説します。

ブロックチェーンが実現するアフリカの可能性

(目次)

  1. ブロックチェーンとは何なのか?
  2. アフリカにおけるブロックチェーン
  3. ヘルスケアとブロックチェーンを融合させた「AfyaRekod」
  4. まとめ

ブロックチェーンとは何なのか?

近年、ニュースでも取り上げられることが多いブロックチェーンですが、ここでは実際にブロックチェーンとはどのようなものなのか、その仕組みやメリットをお伝えしていきます。

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ブロックチェーンは情報を共有・管理するシステム

ブロックチェーンとは、仮想通貨取引のデータを記録するための台帳ないしその仕組みのことであり、分散型のデータベースであるため、複数のコンピュータがネットワークを通じて接続されて同じ情報を共有・管理するシステムです。

分散型データベースの一種なのですが、ブロックチェーンは「Peer-to-Peer型(P-to-P)」と呼ばれ、サーバーのような中間の介入システムが存在しません。

また、データベースの情報はブロックと呼ばれる単位で保存され、それらのブロックは連鎖的につながっています。各ブロックには複数の取引データが含まれ、一つのブロックが完成すると、それが正当性を検証され、ネットワーク全体に記録されます。

※参照URL:【レッスン④】ブロックチェーンって分散型データベースと何が違うの?
「ブロックチェーンと分散データベースの違い」の図を参照
※参照URL:ブロックチェーンとは?特徴やメリット・デメリットを基礎からわかりやすく解説 | Coincheck

ブロックチェーンのメリットはあらゆるものを分散できる

ブロックチェーンはデータを分散させるため、あらゆるメリットがあります。まず初めに、処理権限を分散できるため、恣意性が低くなり、中央集権的な管理が不要で信頼性が高く公平性が増すようになります。それにより、情報の透明性や改ざん防止が可能になるため、セキュリティが強化されます。

そのほか、サーバーが存在しない分、「ダウンタイム」と呼ばれるような、サーバーの不具合などによる時間や修理、または人件費などのコストの削減も実現できます。

※参照URL:ブロックチェーンって何? | G.金融経済を学ぶ
※参照URL:【保存版】超わかりやすいブロックチェーンの基礎知識|ビジネスブログ|ソフトバンク「第6章」参照

 

アフリカにおけるブロックチェーン

上記ではブロックチェーンの仕組みやメリットについてご紹介いたしましたが、実際にどのような現状や課題があるのか、またその需要はあるのかどうかなどをお伝えしていきます。

ブロックチェーン市場は急速に成長

アフリカのブロックチェーンのスタートアップの資金調達額が2022年に調達した資金の総額は4億7400万ドル(約640億円)となり、前年から5倍以上に増加したことからも分かるように、ブロックチェーン分野は急成長しています。

医療もそうですが、金融分野などあらゆるインフラが十分整備されていないアフリカ諸国では、海外企業と貿易取引を行う零細・中小企業がドル決済を安く自由に行うことができない状況が続いているのが現状です。

そのため、アフリカでは、スタートアップがブロックチェーンを積極的に活用し、リープフロッグ型の経済成長を促進しようとしています。

CV VC(スイスに拠点を置くベンチャーキャピタル)の報告によれば、現にケニアやほかのアフリカ諸国では、ブロックチェーン取引が429%増加し、2021年の9000万ドルに比べ2022年は4億7400万ドルまで増加しています。

※参照URL:アフリカでブロックチェーン・スタートアップの資金調達額が5倍増の理由 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)
※参照URL:ケニア政府、ブロックチェーン・Web3ハブを立ち上げ | アフリカでのユースケース確立目指す | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン

アフリカのブロックチェーンとリープフロッグ現象

ブロックチェーン技術は、アフリカの持続可能な発展目標(SDGs(※①参照)達成に向けて積極的に導入されています。これにより、アフリカのスタートアップがリープフロッグ型の発展を遂げ、地域の課題にAIを活用するなど新たな展開を推進しています。

アフリカの急速なハイテク化は、途上国で見られる現象の一例であり、将来的なビジネス展望に大きな影響を与えることが期待されています。

しかし、ブロックチェーンの問題も浮上してきています。ブロックチェーンはデジタルデータの内容を、権限のない者が勝手に書き換えることなどに対しては強いセキュリティ力を発揮しますが、そのセキュリティの強さは情報を共有することで初めてつくられるため、プライバシーを保護できない危険が生じてくる可能性があります。

そのため、IT知識に日常的に接していない難民や一般市民が支援サービスなどを受けようとした際には、情報が漏れる、または第三者に渡ってしまうなどのリスクが生まれやすくなります。

アフリカにおいてはブロックチェーンをフル活用して、リープフロッグ型の経済成長を進めようとするスタートアップが生まれ続けています。

※参照URL①:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
※参照URL②:リープフロッグ型発展に沸くアフリカの今。市場の急成長で、これからのビジネスはどう変わる? | Transformation SHOWCASE | Powered by dentsu Japan

 

ブロックチェーンの応用は多岐に渡る

ブロックチェーンは主に仮想通貨の取引に利用されるのが従来の方法でしたが、その応用は多岐にわたり、金融や不動産、医療、製造業など、幅広い分野で今後は活躍すると考えられています。

例えば、恒常的な電力不足に悩むケープタウンでは、NFTを活用してソーラー電源に投資ができる仕組みを開発するスタートアップなども開始されてきています。

また、インフラだけでなく支払いシステムにも変化が起こっています。アジアに次いで世界第2位の携帯電話市場であるアフリカでは、携帯は通話だけでなくモバイルマネーにも紐付けされるようになっています。現に、サブサハラアフリカ(SSA)は現在、世界のモバイルマネー口座数の43%を占めています。

アフリカのブロックチェーン空間は最も注目される成長中の分野の一つであり、上記以外にも、研究会社やイノベーションセンターなど、あらゆゆ分野で積極的に利用され、アフリカの経済と技術革新における重要な役割を果たす存在になると考えられています。

※参照URL:アフリカでm-paymentが広く普及し、暗号通貨への関心が高まる|Nielsen (ニールセン)
※参照URL:アフリカでブロックチェーン・スタートアップの資金調達額が5倍増の理由 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

 

ヘルスケアとブロックチェーンを融合させた「AfyaRekod」

AfyaRekodとは、2019年にケニアのスタートアップ企業が立ち上げたプラットフォームで、医療ケアとブロックチェーンを上手に融合し、ケニアを始めナイジェリアや南アフリカ共和国、カメルーンやザンビアなどでサービスを展開しています。ここでは、AfyaRekodとはどのようなもので、どのようにブロックチェーンを活用させているのかをご紹介します。

getty-images-j25yGuxhBCA-unsplashAfyaRekodとはヘルスケアに重点を置いたデジタルヘルスプラットフォーム

 #OwnYourHealth(自分の健康は自分で守る)」をモットーに従来の医療と治療とのすれ違いをできるだけ無くすようにしたプラットフォームです。

AfyaRekodでは、プラットフォーム上でアクセス可能なツールやリソースを通じて、いつでもどこでも患者さんが医療施設や医療機関にアクセスでき、サポートを受けられるサービスを行っています。

従来の「行かなければならない治療」から「どこからでも診断や治療を受けられる」サービスを実施するため、自分専用のポータルですべての健康記録や医療サービスに簡単にアクセスできる日本のお薬手帳ならぬ「電子版お薬・治療記録」を作っています。

ブロックチェーン技術で患者さんの医療に関する情報を全て管理

AfyaRekodは安全なブロックチェーン主導の健康プラットフォームであり、医療施設がリアルタイムで健康データを取得、保存、アクセスできるようにし、ブロックチェーン技術を活用し、健康関連データのセキュリティとプライバシーを確保できるようになっています。

また、記録だけでなく、入院患者の病歴・治療履歴も管理し、予防検診の対象となる患者を簡単に探して通知してくれるサービスも提供できるようになっています。

アフリカは、Covid-19、HIV、エボラ出血熱、マラリアなどの多くの伝染病パンデミックが起こる地域でもありますが、この発生・疾病管理システムさえあれば、仮に医学知識が乏しい人がいても、医療関係者がその履歴を見ることにより治療の方向性を迅速に立てることができます。

そのほか、AfyaRekodは、患者のケアと健康を向上させるという究極の目標のもと、医療提供の中心に患者を据える健康情報管理製品を開発していますので、栄養の概念を学ぶ機会がない人たちがいても、適切なアドバイスの基に栄養管理が行えます。

※参照URL:AfyaRekod


まとめ

ブロックチェーンは、分散型のデータベースであり、複数のコンピュータがネットワークを通じて接続されて同じ情報を共有・管理しています。これにより、情報の透明性や改ざん防止が可能となり、中央集権的な管理が不要で信頼性が高く、セキュリティが強化されています。

また、仮想通貨だけでなく、金融や不動産、医療、製造業など幅広い分野で利用できるため、今後さらに発展が期待されるデータベースであると言われています。

アフリカのブロックチェーン市場も急成長しており、ベンチャー資金調達が世界的な成長を上回り、リープフロッグ型の発展を遂げています。

そのほか、 AfyaRekodのようなデジタルヘルスプラットフォームを見ても分かるように、アフリカのブロックチェーン空間は世界でも最も注目すべき成長が見られる分野の一つであり、今後の展望が非常に期待されています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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