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新興国

アジア健康構想とは? “富士山”型!日本政府が推進する裾野の広い保健医療サービスに迫る

来たる高齢化社会を見据えて、日本政府の推進する「アジア健康構想」がアジアの未来に新たな希望をもたらすかもしれません。ここでは「アジア健康思想」とは一体何か、日本政府の考えや、実際に参画している日本企業の取り組みなどをお伝えします。

アジア健康構想とは? “富士山”型!日本政府が推進する裾野の広い保健医療サービスに迫る

来たる高齢化社会を見据えて、日本政府の推進する「アジア健康構想」がアジアの未来に新たな希望をもたらすかもしれません。ここでは「アジア健康思想」とは一体何か、日本政府の考えや実際に参画している日本企業の取り組みなどをお伝えします。

(目次)

  1. アジア健康構想とは
  2. 日本政府の取り組み
  3. アジア健康構想に対する日本政府の意図を考察
  4. 日本企業の具体的な政策例
  5. まとめ

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アジア健康構想とは

まずは、アジア構想とは一体どのようなものなのか、ここではその概念や主な内容について説明いたします。

アジア健康構想とは、平成28年7月に本部長に内閣総理大臣、副本部長に内閣官房長官及び健康・医療戦略担当大臣、本部員としてその他国務大臣で構成される「健康・医療戦略推進本部」において、「アジア健康構想に向けた基本方針」として定められた海外に向けた保健医療プロジェクトです。

急速に進むアジア全体の高齢化に対し、健康長寿社会を実現することを目的に日本の政府と民間企業が手を結び、日本が誇る先端技術の提供や人材育成で健康産業を育てるという基本理念の基に発起されました。

構想の進捗に従い、新しいテーマや課題が顕在化したため、平成30年7月に基本方針が改定され、現在に至ります。改定のポイントは、それまで日本政府が軸足を置いていたアジアの高齢化社会に必要な介護産業の振興、人材の育成等に加え、構想全体を「富士山」になぞらえ、富士山の上部(=最上位の目標)に「医療・介護を中心とした疾病の予防」、中間部には「健康な食事等のヘルスケアサービスの展開」、土台となる下部には「健康な生活のための街づくり」等を目標として掲げ、裾野の広い「富士山型のヘルスケア」として、アジア諸国の互恵的な協力によるそれぞれの社会全体の健康課題の解決を目指した点にあります。

一見すると日本にメリットが無いようにも思われるこのプロジェクトですが、人材の育成や技術を提供することにより、将来的に日本がアジア諸国の市場に参入できる足がかりを作り、介護産業自体の活性化と業界自体の収益の増大を目指し行っています。

※参照URL:https://www.amed.go.jp/content/000114148.pdf

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アジア健康構想の背景と基本理念

現在アジア諸国の平均寿命は世界的に上位であり、2020年の最新の統計によると、アジア諸国内では最下位であるミャンマーでさえも平均寿命は67歳になっています。長寿上位5位までの国になると、その年齢は80歳を超えています。

日本も例外ではなく、アジア諸国では2位、世界的に見ても女性は世界1位、男性は世界4位の長寿国になっています。

そこで問題になるのが「人材不足」です。日本では長寿国ですが少子化も深刻であり、このままで行けば介護をする人材が足りなくなることは必至です。

そのため、将来的な人材不足を補うために日本政府が主体となり、日本の企業と連携し介護技術や人材の育成を助け、アジア諸国全体の問題を解決するように進めているのがアジア健康構想です。

※参照URL:https://ecodb.net/ranking/area/A/wb_le00in.html

※参照URL:https://honkawa2.sakura.ne.jp/1620.html

日本政府の取り組み

アジア健康構想の主な目的は、急速に進むアジア全体の高齢化に対し、健康長寿社会を実現することです。ここでは実際に日本政府がどのような取り組みをしているのか見ていきましょう。

getty-images-WrcKIGP--sQ-unsplash介護施設の海外展開や関連技術の輸出

アジアの国々において高齢者の増加により、介護施設の需要が高まっています。アジア健康構想では、日本の企業が海外に介護施設を建設し、組織化された高品質な介護サービスの提供を行っています。

また、日本は近隣のアジア諸国に比べ、高度な医療技術や介護ノウハウを持っています。これらの技術やノウハウを他国に提供し、介護サービスの向上を支援しています。

特に介護イスやベッド、または補助付き浴槽などは、世界的に見ても珍しいため今後はアジア諸国向けの輸入の拡大も期待されています。

人材育成

アジア健康構想では、アジアの国々における介護産業の人材育成も支援しています。日本へ現地の人々を招き研修を行うことや、日本の介護の専門家たちが現地に赴き、現地の介護や医療従事者の方たちの知識を深める実習も行っています。

また、介護の人材の交流を盛んにすることにより、アジア諸国の介護の質の向上や新たな雇用機会を創出させるだけでなく、現地の方たちへの新たな雇用機会を創出することを目指しています。

医薬品の輸出

日本の医薬品産業がアジア諸国の市場に進出するには、それらの国々の医薬品の自給能力や安全対策の管理能力の向上に対する期待に応える相互互恵的なアプローチが重要になってきます。

このため、日本の医薬品企業は、日本政府、医薬品に関する資料、医薬品に関する専門家のサポートなどが一体になったパッケージ化の枠組みが検討されています。

実際に産業界、政府、学術界、医療関係者が連携し、医薬品の供給安定や品質向上、健康状態の改善などにも貢献しています。

アジア健康構想に対する日本政府の意図を考察

日本政府はアジア健康構想を推進を通して、アジア地域の健康産業の成長や地域の発展に貢献を目指しています。それを踏まえ、あらゆる点から日本政府の意図を考察していきます。

地域の健康長寿社会の実現

日本政府は、アジア地域全体が急速に高齢化していることを認識しています。特に日本の少子化は非常に深刻であり、近い将来の日本の経済や国力にも影響すると考えられています。

この高齢化社会と少子化問題の両方を解決するために、健康長寿社会の実現が必要不可欠です。アジア健康構想は、アジアの国々が健康産業を強化し、高齢化に対応する持続可能な解決策の発見を支援することで、地域の健康長寿社会の実現を目指す意図をもっていると考えます。

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日本の医療技術やノウハウの国際展開

日本は高度な医療技術(最新の医療機器や治療薬など)や国民健康保険制度などの保険制度、または健康産業(各種健康食品や健康機器の製造・販売,検診サービスや健康相談サービス,指圧・マッサージやゲルマニウム温浴など)の体制が整っており、国内で培われたノウハウが世界的に高い評価を得ています。

アジア健康構想は、これらの日本の医療技術やノウハウを海外市場に展開することにより、アジアの国々に貢献し、同時に日本の医療産業の国際競争力を向上させる意図があります。

アジア諸国への国際貢献と日本企業の成長と経済効果

アジア健康構想は、アジア地域との連携を強化することにより、地域の発展に寄与することを意図しています。健康産業の育成や技術の輸出を通じて、アジア諸国との友好的な関係を築き、国際的な貢献を果たすことが狙いです。

また、アジア健康構想は、日本の医療産業や介護産業の海外進出を促進し、海外市場での収益を増やすことで、日本企業の成長を支援することも視野に入れています。

今後の海外でのビジネス展開によって得た収益を日本国内に還元することで、国内経済にも良い影響を与えることが期待されます。

日本企業の具体的な政策例

では、実際に日本の企業がどのようにアジア諸国の健康構想に貢献しているのか、その具体的な政策例を見てみましょう。ここで挙げるのは代表的なものばかりですが、それ以外にもさまざまな日本企業がアジア諸国の健康推進のために介入しています。

日本光電工業株式会社のBreath cueプロジェクト 

日本とインドネシアの間で進行中の医療機器プロジェクトです。このプロジェクトは、心肺蘇生(CPR)の際に使用されるバック換気装置に関連する新しいモニタリング技術の開発・導入を目指して始められました。

Breath cueプロジェクトでは、日本の医療機器メーカーである日本光電工業株式会社が最新のモニタリング技術を開発し、バック換気モニターをインドネシア市場に導入しました。具体的な用途として新⽣児の呼吸をサポートし、後遺症の発⽣や死亡率低減を目的としています。

バック換気装置とは、心肺蘇生時に患者に人工的に呼吸を行うために使用される重要な装置ですが、適切な換気の確保や患者の状態のモニタリングが課題とされています。

日本とインドネシアの医療関係者や研究機関が連携し、トレーニングや情報交換を行いながら、モニターの適切な使用法や応用方法を普及させています。

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中外製薬株式会社の「アクテムラ(Actemra)」

アクテリアムはリウマチ治療薬として知られており、日本とインドネシアの両国で使用されている医薬品です。

この薬は、特定の免疫シグナルを阻害することで炎症を抑制し、関節の症状を軽減し、機能を改善する効果があります。

中外製薬株式会社は「アクテムラ」の世界展開を積極的に進めており、海外市場にも積極的にアクセスした結果、インドネシアを含む多くの国で「アクテムラ」の承認申請が行われ、現地の保健当局による審査や承認を経て、輸入や流通が可能になりました。

オリンパス株式会社による内視鏡・AI診断支援システム

オリンパス株式会社は、内視鏡と人工知能(AI)を組み合わせた診断支援システムをタイと日本で展開しています。このシステムは、内視鏡を使って体内の臓器や組織を観察する際に、AI技術を活用して医師の診断をサポートするものです。

内視鏡を挿入して得られる映像やデータをAIがリアルタイムに分析し、異常箇所や疾患の可能性を早期に検知することができるため、消化器系や呼吸器系などの症例において医療機関で実用化されています。

このシステムの導入により、疾患の早期発見や正確な診断が可能になり、医師の判断を補完することで、患者の治療の質が向上することが期待されています。

新興国市場に進出する際には、双方にとって利益をもたらす協力的な関係を築くことが重要であり、包括的な支援枠組みが新たな展望を開く可能性を秘めていると言えます。

※参照URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/kokusaitenkai/eiyo_bukai_dai2/siryou03.pdf

※参照URL:https://www.amed.go.jp/content/000114148.pdf

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まとめ

アジア健康構想は、日本の政府と民間企業が連携して海外に介護施設を建設し、人材育成や介護機器などの関連ビジネスを提供するプロジェクトであり、この取り組みは、急速に進むアジア全体の高齢化に対応し、健康長寿社会の実現を目指しています。

主な取り組みは「介護関連技術の輸出」であり、日本の医療や介護ノウハウを海外市場に展開することにより、アジア地域の高齢化に対応する専門知識や技術の不足を補完し、介護産業の根付きと人材育成を促進することを目指しています。

日本の保険財政の制約や介護事業の収益向上の困難な状況から、海外市場の拡大を通じて国内市場への還元と日本の企業にも利益をもたらすことが狙いとされています。

アジア健康構想の主な目標は、日本事業者の海外進出によってアジア地域に介護産業を浸透させることです。

同時に、新たな介護産業に携わる人材の増加を通じて日本の介護人材を充実させ、国内での収益率を高めることが最終的な目標とされています。このプロジェクトを通じて、アジア全体の高齢化社会に向けた持続可能なソリューションを提供することが期待されています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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