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アフリカ

アフリカの医師不足:原因と対策、日本企業の知見がもたらす画期的な変化

アフリカの医師不足は深刻な問題であり、多くの国々がその影響を受けています。しかし、日本の知見と技術がこれからのアフリカの医療制度に画期的な変化をもたらす可能性があります。本記事では、日本の取り組みがどのようにアフリカの医師不足問題に対処しているか、そしてその成果がどのように現れているかを検証します。

アフリカの医師不足:原因と対策、日本企業の知見がもたらす画期的な変化

アフリカの医師不足は深刻な問題であり、多くの国々がその影響を受けています。しかし、日本の知見と技術がこれからのアフリカの医療制度に画期的な変化をもたらす可能性があります。本記事では、日本の取り組みがどのようにアフリカの医師不足問題に対処しているか、そして、その成果がどのように現れているかを検証します。

(目次)

  1. アフリカの医師不足の原因:深まる課題とその背後にある要因
  2. アフリカの医師不足を助けることによる日本企業のメリット
  3. 日本の知見がもたらす画期的な変化
  4. 日本企業によるアフリカ医師不足への対策:持続可能な医療制度を目指して
  5. まとめ

アフリカの医師不足の原因:深まる課題とその背後にある要因

アフリカ各国が直面する医師不足は、多くの要因が絡み合って生じています。ここでは、医師不足の主要な原因について詳しく解説します。

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医学教育の不十分さ 

アフリカの医学教育は、医療スタッフの人材不足による教育インフラの整備不足がまず挙げられます。医学生や研修医がいても、指導ができる教員や指導医が不足しているため、臨床経験を積むことができないまま医療の現場で働かなくてはいけません。

また、指導医は足りていても、医師を育てるカリキュラムの未熟さや教材不足も教育の質を低下させる要因となり、十分な医師の養成が難しい状況にあります。

※参照URL:https://gooddo.jp/magazine/health/africa_health/4033/

資金不足と脳流出(ブレインドレイン)

政治家や一部の裕福層は病気やケガになっても、独自のコネクションを持ち高額な治療費の支払いができるため、治療を受けることができます。そのため、医療分野への投資が不十分です。

国や市町村の予算が医療費にあまり配分されないため、医療施設や設備の整備、医師の給与や待遇の改善が進まず、医師不足が深刻化しています。

また、アフリカの医師たちは、より良い待遇やキャリアアップの機会を求めて、先進国や他の地域に移住する傾向があります。この現象はブレーンドレインと呼ばれ、医師不足をさらに悪化させています。

※参照URL:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsa050004

地域的な格差や疾病負担の高さ 

アフリカにおける医師不足は、都市部と農村部の間で格差が存在します。農村部では医療インフラが不十分で、医師や医療従事者が働きたくないと感じることが一因です。

また、現在でもアフリカ国内ではエイズ、マラリア、結核などの感染症が蔓延しており、疾病負担が非常に高いです。これにより、医療従事者が不足している地域では、医師1人あたりの患者数が増加し、過労やストレスが蓄積することで、さらなる医師不足を引き起こす悪循環が生じています。

アフリカの医師不足を助けることによる日本企業のメリット

日本の知見と技術がアフリカの医師不足問題の解決に貢献することにより、アフリカ各国の医療制度が向上し、国民の健康状態も改善されることが期待されます。ここでは、実際に日本企業へどのようなメリットがあるのか説明していきます。

国際的な評価・地位向上と人道的責任の遂行

アフリカの医師不足問題に対する支援は、日本の国際的な評価と地位を向上させることができます。先進国として、開発途上国の健康問題に貢献することは、国際社会における日本のリーダーシップを強化する効果が望めます。

また、日本は人道主義の国としてアフリカの医師不足問題に責任を持って取り組むことで、国際社会からの評価が高まります。アフリカの人々の生活状況や医療アクセスが改善されることで、人道的な観点からも貢献が期待できます。

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技術や知識の共有

日本がアフリカの医師不足問題に協力することで、日本の医療技術や知識をアフリカ諸国と共有することができます。これにより、日本の医療分野の国際的な影響力が高まるとともに、アフリカ諸国の医療水準向上にも寄与します。

また、それらの共有を通して、外側からでは見えてこなかったアフリカ独自の文化や生活様式を理解することができるため、日本企業によるアフリカ市場進出への足がかりにもなるでしょう。

経済的利益

日本の医療機器や技術をアフリカ諸国に提供することで、日本の企業が新たな市場を開拓し、経済的利益を享受できると考えられます。

また、他の発展途上国に比べ、アフリカ諸国は国民の母体数も大きく、まだまだ発展の余地がある市場です。そのため、アフリカ諸国の医療水準が向上することで、経済発展やビジネスチャンスが生まれ、日本経済にも良い影響を及ぼす可能性が高いです。

日本の知見がもたらす画期的な変化

ここでは、日本の取り組みがどのようにアフリカの医師不足問題に対処しているか、そして、その成果がどのように現れているかを検証します。

日本の医療技術と教育ノウハウ

日本は、アフリカ諸国に高度な医療技術を提供することで、医療水準の向上を支援しています。例えば、医療機器や診断技術の導入、病院や診療所の建設・改築などが行われています。

また、医学教育のモデル国としてアフリカ諸国の医学教育改革に協力しています。日本の医学教育システムやカリキュラムを参考に、アフリカ諸国の医学教育の質とアクセスを向上させる取り組みが行われています。例えば、現在では、日本の大学や医療機関とアフリカ諸国の大学の医学部が提携し、教育プログラムの共同開発や教員交流が進められています。

そのほか、 日本は、アフリカ諸国の医療従事者の人材育成を支援しています。JICA(日本国際協力機構)やそのほかの民間団体を通じて、医師や看護師、技術者などの研修プログラムが提供されています。

特に、AA Health Dynamics社によるウェビナーを用いた研修やハイブリッドによる医療の技術トレーニングは年々その需要を増しており、それらを通じて、アフリカ諸国の医療従事者のスキルアップが図られています。

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これらの取り組みを通じて、日本はアフリカ諸国の医師不足問題の解決に貢献しています。今後も、医療技術の導入や教育改革、人材育成プログラムなどの支援が継続されることで、アフリカ諸国の医療問題が改善されることが期待されます。

※参照URL:https://www.aa-healthdynamics.com/ja/blog/article_7

※参照URL:https://www.jica.go.jp/activities/issues/health/5S-KAIZEN-TQM-02/ku57pq00001pi3y4-att/5S-KAIZEN-TQM_201006.pdf

医療インフラの設備

日本は、アフリカ諸国の医療施設整備を支援しています。これには、病院や診療所の建設・改築、医療機器の提供、水道や電力インフラの整備などが含まれます。

環境設備だけでなく、ICT技術を活用したテレメディシンの普及も支援しています。遠隔地や医療資源が乏しい地域での診療サービスを提供することで、医師不足に対処し、医療アクセスの向上を図ります。

また、インターネットを通じた診療や専門家とのコンサルテーション、画像診断や遠隔教育など、テレメディシンを活用した様々なサービスが提供されています。

日本の知見と技術がアフリカの医師不足問題の解決に貢献することで、アフリカ各国の医療制度が向上し、国民の健康状態も改善されることが期待されます。

日本企業によるアフリカ医師不足への対策:持続可能な医療制度を目指して

アフリカの医師不足問題に対処するために、現在までにさまざまな対策が取り組まれています。ここでは、その主要な対策を挙げ、それぞれの取り組みについて詳しく解説します。

JICA(日本国際協力機構)が行う医療従事者たちへの研修プログラム 

JICA(日本国際協力機構)では、アフリカ諸国の医療従事者の養成や能力向上を支援しています。例えば、医師や看護師、技術者などの研修プログラムの提供により、日本での研修受け入れを通じて、現地医療従事者のスキルアップを図る取り組みを行っています。

また、 現地病院での医療サービスの質向上を支援するために、診療ガイドラインの策定や、感染症対策、患者安全管理なども行われています。それにより、コミュニティヘルスワーカーや伝統医療の活用、予防医学の推進などを通じて、地域住民の医療アクセスを改善していくようにしています。

それ以外にも、保険制度の導入や改善、医療資源の適切な配分、医療サービスの運営管理など、持続可能な医療制度構築に向けた取り組みを開始しています。

※参照URL:https://www.jica.go.jp/activities/issues/health/5S-KAIZEN-TQM-02/ku57pq00001pi3y4-att/5S-KAIZEN-TQM_201006.pdf

トヨタ自動車株式会社のワクチン保冷輸送者

トヨタ自動車では、ワクチンの保冷輸送を行うための専用車両を開発しアフリカに提供しています。この保冷輸送車は、ワクチンの効果を維持するために必要な低温環境を確保し、遠隔地やインフラが不十分な地域へのワクチン輸送を可能にします。

保冷輸送車は、特別な冷却システムや断熱材を使用して、輸送中のワクチンの温度管理を行います。また、バッテリーやエンジンからの電力供給により、車両が停止している間も冷却機能が維持されます。さらに、温度記録装置やGPSによる位置情報管理など、輸送状況のモニタリングも可能です。

アフリカ諸国では、地域によっては電力供給や冷蔵施設が不足しており、ワクチンの効果が損なわれるリスクが高まります。トヨタ自動車のワクチン保冷輸送車は、このような状況下でもワクチンを適切な温度で運ぶことができるため、アフリカ諸国のワクチン接種プログラムの実施に大きく寄与しています。

また、コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン輸送にも利用され、感染拡大防止に貢献しています。

※参照URL:https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/34993663.html

AA Health Dynamics社の医師への医療技術トレーニング

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AA Health Dynamics社では、ケニアの医師たちに対して、臨床医がベッドサイドで診療の一環として行う超音波検査 Point of Care Ultrasound(POCUS)を中心としたトレーニングに力を入れて取り組んでいます。POCUSトレーニングは3ヶ月間のカリキュラムで、オンライン講座、ミニテスト、技術トレーニング、画像評価、最終試験をクリアすることで、現地の医師は毎年の医師免許の更新に必要なCPDポイントを取得できます。

現在では、約50名の医師がトレーニングを受けています。将来的には、このサービスを東アフリカ、西アフリカへ展開していく予定です。 

この医療トレーニングの重要な面として、POCAS に限らず、今後、ケニアでプロモーションを行いたい医療機器を本トレーニングで使用することで、現地の医療従事者を実際に教育しながら機器の需要を創出し、マーケティングもできる点が挙げられます。

※参照URL:https://www.aa-healthdynamics.com/ja/blog/article_7

日立製作所のCTスキャンやMRI、超音波検査機器

日立製作所は、アフリカの医療インフラ整備において、画像診断機器や医療機器の提供を行っています。CTスキャナーやMRI、超音波検査機器などの高品質な医療機器を提供し、現地医療施設の診療能力の向上に寄与しています。

最近では、指静脈認証技術にも力を入れて取り組んでいます。指静脈認証技術とは、日立が開発した生体認証技術で、指の静脈パターンで個人を認証するものです。

近赤外線を指に透過させて得られる指の静脈パターンの画像から静脈の存在する部分を構造パターンとして検出し、あらかじめ登録した静脈の構造パターンと照合させて個人認証を行います。

指静脈は体内にある情報であるため、偽造や成りすましが極めて困難であり、高いセキュリティレベルを実現します。日立は、2002年に指静脈認証装置を製品化して以来、ATMの本人認証やPCログイン、入退室管理など、さまざまな分野での適用を広げてきました。

※参照URL:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2012/03/0312a.html

NEC株式会社のテレメディシンや遠隔診療システムの整備

NEC社は、遠隔診療システムの整備に取り組んでおり、その一環として「遠隔診療システムプラットフォーム」を提供しています。このプラットフォームは、3省3ガイドラインに準拠した高セキュリティシステムを採用し、医療情報を扱う各種サービスのシステム設計、開発、保守運用までをワンストップで提供しています。

さらに、現在は日本国内だけですが、ICTの力で医療現場の安全安心や医師の働き方改革などの課題を解決するため、次世代のオンライン診療実現に向けた新たな病院情報システムの実証を進めています。

また、NEC社は2025年度末までに200施設以上へのクラウドサービスの導入を目指しています。これは、医師や看護師の不足や偏在に伴う医療機関の業務量過多や地域医療の格差など、さまざまな課題に対処しています。

※参照URL:https://jpn.nec.com/profile/sdgs/innovators/project/article05.html

※参照URL:https://jpn.nec.com/medical_healthcare/solution/ol/index.html

※参照URL:https://jpn.nec.com/press/202111/20211117_01.html

まとめ

アフリカの医師不足は深刻な問題であり、多くの国々がその影響を受けています。医師不足の原因として、医学教育の不十分さがあります。教育インフラの整備不足、指導医の不足、カリキュラムの未熟さや教材不足が教育の質を低下させています。

また、資金不足と脳流出(ブレインドレイン)が医師不足を悪化させており、医療分野への投資が不十分であり、医師の待遇改善が進まないため、医師が先進国や他の地域へ移住してしまうことも一因です。

地域的な格差や疾病負担の高さも医師不足に影響しており、特に農村部では医療インフラが不十分で、感染症が蔓延しているため、医師1人あたりの患者数が増加し、過労やストレスが蓄積しています。

このような状況を踏まえて、日本の知見と技術がアフリカの医師不足問題の解決に貢献することにより、アフリカ各国の医療制度が向上し、国民の健康状態も改善されることが期待されています。

実際に日本企業には、国際的な評価・地位向上と人道的責任の遂行、技術や知識の共有、経済的利益などのメリットがあります。今後も医療技術の導入や教育改革、人材育成プログラムなどの支援が継続されることで、アフリカ諸国の医療問題が改善されることが期待されます。

 

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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