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アフリカ

アフリカの医学教育の飛躍 と日本の支援がもたらす変化

アフリカの医学部教育は近年、多くの国際的な支援を受け、急速に発展を遂げ、地域社会に適応したカリキュラムや現地の課題に対応する技術革新が、アフリカ全土で医療の質を向上させています。本記事では、アフリカの医学部教育の最近の動向やその影響について詳しく解説します。

アフリカの医学教育の飛躍 と日本の支援がもたらす変化

アフリカの医学部教育は近年、多くの国際的な支援を受け、急速に発展を遂げ、地域社会に適応したカリキュラムや現地の課題に対応する技術革新が、アフリカ全土で医療の質を向上させています。本記事では、アフリカの医学部教育の最近の動向やその影響について詳しく解説します。

目次

  1. アフリカ諸国の一般的な医学部教育
  2. アフリカ医学教育カリキュラムの特長
  3. アフリカ医学部教育の現状
  4. アフリカの医学教育に関するイノベーションとテクノロジーの活用
  5. 日本からの支援
  6. まとめ

アフリカ諸国の一般的な医学部教育

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アフリカの医学部教育内容および年数は、国や地域によって異なる場合がありますが、一般的には以下のような構成になっています。

1.学士課程 (Pre-Medical Program):医学部に入学する前の基礎教育で、通常は2〜3年間です。生物学、化学、物理学、数学などの科目を学びます。

2.医学部課程 (Medical Program):医学部に入学後、通常は5〜6年間の教育が行われます。

・基礎医学科目: 医学部の初めの2〜3年間は、解剖学、生理学、生化学、病理学、微生物学、薬理学などの基礎医学科目を学びます。

・臨床医学科目: 基礎医学科目を修了した後、3〜4年間の臨床医学科目が行われます。内科、外科、産婦人科、小児科、精神科などの各科で実習を行い、実際の患者と接しながら診断や治療法を学びます。

3.インターンシップ (Internship):医学部卒業後、通常は1〜2年間のインターンシップが行われます。病院やクリニックで実際に患者を診察し、指導医のもとで実践的な経験を積みます。

4.専門研修 (Residency):インターンシップを終えた後、専門分野を選んで3〜6年間の研修が行われます。専門医になるために必要な知識や技術を習得します。

日本では6年、米国では8年(学士過程+医学部過程)と比べ、アフリカの医学部教育はおおよそ10〜14年間かかることが一般的です。

ただし、国や地域によっては、教育期間や内容が多少異なる場合があります。また、一部の国では、医学部と学士課程が一体化した6年制の医学部も存在しています。

※参照URL:https://admission.ug.edu.gh/applying/node/46

※参照URL:https://www.ub.bw/programmes/health-sciences/school-allied-health-professions/bachelor-science-medical-laboratory-sciences-bsc-mls

※参照URL:https://coffeedoctors.jp/news/926/

アフリカ医学教育カリキュラムの特長

アフリカの医学部教育カリキュラムは、地域の特性や課題に対応するために、独自の進化を遂げています。

地域に根ざした教育

アフリカの医学部では、現地の疾病や感染症に対する知識やスキルを重視し、地域社会に密着した医療を提供できるよう教育が行われています。

そのため、医学生たちは、地域社会や医療施設で実践的な経験を積むことが求められます。これにより、学生は地域の患者とのコミュニケーションや問題解決能力を身につけることができます。

チームベースの学習

医学部教育では、医師だけでなく、看護師や薬剤師、公衆衛生の専門家といった多職種のチームで協力して働く能力が重視されています。そのため、チームワークやコミュニケーションスキルが強調されるカリキュラムが導入されています。

また、継続的な研修や評価が行われることで、医師の質の向上を目指し、教育プログラムや評価方法も、最新の医学知識や技術に合わせて更新されています。

文化的・社会的な要素の組み込み

アフリカは同じ国内でも種族により独自の文化や自治体を築いている社会も多いです。アフリカの医学部教育では、現地の文化や社会的な要素を考慮した教育が重要とされており、患者とのコミュニケーションや適切な治療方法を学ぶことが求められます。

これらの特徴を持つアフリカの医学部教育カリキュラムは、地域に適応した医療人材の育成を目指しており、アフリカ全土で医療の質の向上をサポートしています。

※参照URL:https://medical-educator.hatenablog.com/entry/2020/07/24/064533

アフリカ医学部教育の現状

アフリカの医学部教育は、これらの現状を踏まえながら、地域のニーズに応える医療人材を育成し、アフリカ全土で医療の質を向上させることが求められています。

医療人材の不足

アフリカ全土では、医療人材が不足しており、特に地域差が大きいです。私たち外国人には負担が少なく感じるような学費でも、貧富の差が激しい地域ではまだまだ医学部は費用が高く、富裕層の学生しか医学部に進学できない状態です。

また、医学部を卒業し病院に勤めようと思っても、医療施設が限られていることから、常に就職できる確率は低く、親が医師または役人など、コネクションも必要になります。

さらに、国によっては医師の賃金は驚くほど低い場合も多く、家族を養えないため、他の職業に転職してしまうことも医師不足の一因になっています。

資源の不足

適切な設備や教材、教員などの医学部教育に必要な資源が不足している場合があります。人材不足のために、指導医がいない病院で働くことも多く、新米医師だけでさまざまな症例の患者を診療しなくてはいけません。

また、資源の不足は、教育の質や医療人材の育成に影響を与えてしまいます。特にアフリカでは、地域社会の課題や感染症などに対応できる医療人材の育成が目指されていますが、人材不足のために、その地域自体の医療自体の運営が困難になる場合もあります。

国際協力と支援

アフリカの医学部教育は、国際的な協力や支援を受けて発展しています。日本や欧米諸国などが、資金援助や人材育成、技術移転などの形で支援を行っています。

特に、イノベーションとテクノロジーの活用は近年目覚ましく、 アフリカの医学部では、テレメディシンやモバイルヘルスなどの最新技術が活用されています。

これにより、医療の質が向上し、地域の医療ニーズに対応できるようになり、最新の医学知識や技術を身につけるための研修や評価が行われています。

※参照URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000102986.html

※参照URL:https://gooddo.jp/magazine/health/africa_health/4033/

※参照URL:https://coffeedoctors.jp/news/926/

アフリカの医学教育に関するイノベーションとテクノロジーの活用

アフリカ諸国では、さまざまな医療問題の今後の課題を解決しようと、医療教育においてもイノベーションとテクノロジーの活用が盛んになってきています。これらの技術は医療従事者の育成や継続教育にも役立っており、今後のアフリカ全土での医療の質の向上が期待されます。

テレメディシン

遠隔地域との医療アクセスを改善するため、インターネットやビデオ通話を活用した診療が行われています。これにより、専門家の意見を求めたり、遠隔地域の患者とコンサルテーションを行ったりすることができます。

モバイルヘルス(mHealth)とシミュレーション教育

携帯電話やスマートフォンを活用した医療サービスが普及しています。これにより、患者の健康情報の収集や管理、診断や治療の支援、予防医学や健康啓発活動が行われています。

また、医学生や医師が、患者に危害を与えることなく、手術や治療法を練習できるシミュレーション教育も導入されています。これには、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)などの技術が活用されています。

AA Health Dynamics社の2020年から開始された医療教育プロジェクト「MedicScan」では、アフリカの医療従事者向けの医療教育および情報提供プラットフォームを展開しています。

このプラットフォームは、アフリカの医療関係者に最新の医療知識や技術を提供することを目的としています。15名の医師を現地トレーナーとして育成を行い、現在は50名の医師が同社のトレーニングを受けています。

この会社の医療教育の特筆すべき点は、使用されている機材が今後ケニアでプロモーションを行いたい機器であるということです。このアプローチにより、現地の医療従事者への教育を提供しながら、同時にマーケティングも効果的に行うことが可能となります。

電子教材や人工知能(AI)とビッグデータの導入

インターネットや電子書籍を活用した教材が導入されており、最新の医学知識や研究成果にアクセスしやすくなっています。また、オンラインコースやウェビナーなどのリモート教育も普及しています。

また、電子教材だけでなく、医療分野における人工知能やビッグデータの活用も進んでいます。これにより、診断の精度や効率が向上し、パーソナライズドメディシンや予防医学の発展が期待されています。

特に、パーソナライズドメディシン(個別化医療、個人化医療)とは、患者の遺伝子情報、病歴、生活習慣などの個々の特性に基づいて、最適な診断、治療、予防を提供する医療の新しいアプローチです。

このアプローチにより、患者に対してより効果的で副作用が少ない治療法を選択し、それぞれの方に合わせた治療効果やリスクを考慮した医療が実現されます。

※参照URL:https://www.aa-healthdynamics.com/ja/blog/article_7

※参照URL:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0701/5833f926f6ec875f.html

日本からの支援

日本は、アフリカの医学教育の発展に向けて、さまざまな形で支援をしており、アフリカ全土での医療の質向上に貢献しています。日本とアフリカの医療従事者が相互に学び合い、国際的な連携を深めることを目指し、世界の医療問題に共同で取り組んでいます。

技術協力と研修プログラム

北海道大学は、「大学の世界展開力強化事業」の一環として、約40年にわたる交流があるザンビア大学と協力し、国際的な保全医学を目的とした大学院生の教育交流プログラムを展開しています。

アフリカでのプログラムでは、日本では体験できない環境で、世界が直面する問題を解決するための知識と技術を現地で学び、実践的な経験を積みます。一方で、ザンビア大学から来日する学生たちは、研究室での活動を通じて、保全医学の最先端研究に触れる機会を得ます。また、日本の複数の大学では医学部の学生間の間の研修プログラムも行われています。

現地では、日本と違い限りある医療機器の中で医学知識と技術を駆使し患者の診療にあたります。日本では学べない経験や文化を吸収することができるため、最近では留学する学生も多くなっています。

※参照URL:https://africa.vetmed.hokudai.ac.jp/overview.html

※参照URL:https://www.u-fukui.ac.jp/international/study_abroad/data/experiences/short-term/makerere/

資金援助

日本政府や民間団体は、アフリカの医学部や医療機関の設備整備や運営費用の支援を行っています。これにより、教育環境や医療サービスの質が向上します。

医学部だけでなく、サブサハラ・アフリカ地域では、多くの国で未だに紛争が起こっているため、難民の方たちへの医療支援が盛んにおこなわれています。

※参照URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/page22_000618.html

研究協力

日本の大学や研究機関とアフリカの医学部が共同で研究を行っており、互いの知見や技術を共有し、アフリカの医療問題の解決につながる研究成果を生み出しています。

黄熱病の研究中に、自身も黄熱病に感染しガーナで亡くなった野口英世博士。彼の足跡をたどる形で、日本は感染症が深刻な問題となっているガーナでの研究を支援するため、1979年に「野口記念医学研究所」の設立を後押ししました。

その後は同研究所の研究能力向上を目的とした技術協力や、施設整備・機材提供などの支援を続け、その結果、同研究所は現在、西アフリカを代表する医学研究所へと成長を遂げています。

※参照URL:https://www.jica.go.jp/60th/africa/gha_01.html

まとめ

近年、アフリカの医学部教育は多くの国際支援を受けて急速に発展しており、地域社会に適応したカリキュラムや技術革新がアフリカ全土で医療の質の向上に寄与しています。

アフリカ各国の医学部教育の内容や年数は国や地域によって異なりますが、一般的な構成は学士課程(Pre-Medical Program)、医学部課程(Medical Program)、インターンシップ、専門研修(Residency)となります。

日本の6年制や米国の8年制(学士課程+医学部課程)と比較して、アフリカの医学部教育は概ね10〜14年間が一般的です。ただし、国や地域によって教育期間や内容が異なる場合があり、一部の国では6年制の医学部も存在します。

アフリカの医学部教育カリキュラムは、地域特性や課題への対応を目的として独自の発展を遂げ、その中でも、地域に密着した教育、チームベースの学習、継続的な研修と評価、文化的・社会的要素の考慮の4つは特に重要視されています。

また、アフリカの医学部教育では、現状を考慮しながら、地域のニーズに対応した医療人材を育成し、アフリカ全土で医療の質を向上させることが求められています。

特に、医療人材の不足、設備や資源の不足、国際協力と支援、イノベーションとテクノロジーの活用はアフリカの医学教育の現状を表す4つのキーワードになっており、それらの不足の補充や今後の国際協力や支援がアフリカの医学教育が発展するためのカギとなっています。

特に、テレメディシン、モバイルヘルス(mHealth)とシミュレーション教育などのイノベーションとテクノロジーが盛んに活用されています。AAヘルスダイナミック社は、アフリカの医療従事者向けの医療教育・情報提供プラットフォーム「MedicScan」を展開し、現地の医師をトレーナーとして育成しながら、最新の医療知識や技術を提供しています。

また、現地の医療従事者への教育提供と同時に、マーケティングも効果的に行っています。

そのほかにも、インターネットや電子書籍を用いた教材が導入され、最新の医学知識や研究成果に容易にアクセスできるようになっています。

日本でも、日本とアフリカの医療従事者が互いに学び、国際的連携を深め、医療問題への共同取り組みを推進し、アフリカの医療インフラ整備や研究開発を支援し続けることが期待されています。

増田さなえ

増田さなえ

米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

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