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リバースイノベーション

アフリカの経済成長を支える「リープフロッグ現象」とは?|事例とともにご紹介

近年、「リープフロッグ現象」と呼ばれる発展が、アフリカやインドなどの新興国内で見られ、今後の技術革新や経済成長が期待されています。特に2050年には26億人にまでの人口増加が予想されているアフリカは、世界中からスタートアップ企業や新たなビジネスが生まれる場となっています。今回は、現在進行形で経済が発展しているアフリカのリープフロッグ現象を事例とともにご紹介していきます。

アフリカの経済成長を支える「リープフロッグ現象」とは?|事例とともにご紹介

近年、「リープフロッグ現象」と呼ばれる発展が、アフリカやインドなどの新興国内で見られ、今後の技術革新や経済成長が期待されています。特に2050年には26億人にまでの人口増加が予想されているアフリカは、世界中からスタートアップ企業や新たなビジネスが生まれる場となっています。今回は、現在進行形で経済が発展しているアフリカのリープフロッグ現象を事例とともにご紹介していきます

目次:

  1. リープフロッグ現象とは

  2. リープフロッグ現象で急成長を遂げるアフリカ

  3. リープフロッグ現象が起こる要因

  4. アフリカでのリープフロッグ現象の事

  5. リープフロッグ現象で成功するためには


リープフロッグ現象とは

まずは「リープフロッグ現象」について、基本的な情報から解説していきます。リープフロッグ現象がなぜ新興国であるアフリカで広がりを見せているのか、についても触れています。今後新規ビジネスをアフリカで検討されている方は、事前知識として確認しておきましょう。

getty-images-1VWAF9ZJqhw-unsplash

途上国が蛙飛びのように一気に発展する現象

リープフロッグ現象とは、先進国と比較してインフラが整備されていない国内で、段階的な発展ではなく一気に最先端技術のサービスが広がっていくことを指します。カエルがジャンプするように、新興国内の人々の暮らしが発展していく様から「蛙飛びジャンプ」という造語が生まれ、名付けられました。

これまで社会インフラが整っていない途上国は、先進国の後を追う形でIT化やサービスなどテクノロジーが進歩していくと考えられていました。しかし、近年ではアフリカをはじめとした新興国の中には、こういったプロセスを踏まずに発展していくケースが出てきているのです。

例えば、日本では電話は現在のスマートフォンになるまでに複数の段階を経ています。有線の固定電話からポケベル、そしてガラケーと順を追って普及してきました。しかし新興国であるアフリカでは、固定電話の普及が進む前に多くの人々がスマートフォンを手にしています。2014年時点での人口に対する携帯普及率は日本が94.4%、アフリカはガーナ83%、ケニア82%、ナイジェリア89%、セネガル83%、南アフリカ89%と多くの国が8割を超え、遜色がないことがわかります。一方で、固定電話になると日本の約8割に対し、アフリカの国々は1割以下と、普及率は携帯電話と比較して大きく差が生まれているのです。

このようにアフリカをはじめとした新興国は、従来の段階的な技術的進化ではなく、飛躍的な技術の導入を行うことで経済規模としても急速に発展しているのです。

参考:https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20150529-00046015

リープフロッグ現象で急成長を遂げるアフリカ

リープフロッグ現象で、今後のビジネス市場の拡大を期待されているのがアフリカです。2050年には、アフリカの人口が世界のおよそ25%を占める割合になると予想されており、近年では欧米や中国が積極的に市場に参入しています。リープフロッグ現象によって新たなビジネスが生まれるマーケットとして、世界中から注目されているのです。

代表的なのは先述した携帯電話の普及です。アフリカのナイジェリアでは、銀行口座を持たずに携帯電話を使った電子決済や暗号資産の活用が進んでいます。その背景にはナイジェリア政府の外貨規制や為替管理制度の存在があります。海外企業と取引を行う際、規制により外貨での支払いが難しいため、代わりに暗号資産での決済がなされているのです。また、国外に働きに出た際に、国内の家族に送金する手法としても利用されています。

インフラが整備されていない環境だからこそ、モバイルサービスが急速に広がり携帯電話の普及につながったのです。

参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2022/048_honbun.html

リープフロッグ現象が起こる要因

ここからはなぜリープフロッグ現象が起こるのか、考えられる要因についていくつかご紹介していきます。

インフラが整っていない

新興国では先進国に比べてインフラが整っていない地域が多いため、生活や医療などそこで暮らす人々のニーズが顕著に現れます。日常の生活に大きく関与している分、新たな技術の導入によって現状の暮らしの改善が見込めるのであれば、消費者の心理的にも受け入れやすいといえるでしょう。

実際に、中国やインドでは日常生活における不満からキャッシュレス化が進んだことも、リープフロッグ現象の事例の一つです。偽札の横行や高額の紙幣が廃止されたことで、安全で利便性の高い電子マネーが世間に浸透しやすい土壌がありました。

現状の生活における不安や不満は、新たなサービスを一気に普及させる原動力になるのです。

法律や既存サービスなどのしがらみが少ない

新しい技術やサービスを導入する際に、国の法律や制度、既存サービスなどのしがらみが少ないことも、新興国でリープフロッグ現象が起こりやすい一つの要因です。例えば先進国で新技術を導入する場合、既存のシステムや技術でも同様な成果や運用が可能なケースが起こりえます。多少既存システムよりも優れていたとしても、開発にかかるコストや導入にあたって発生する人件費などを考慮すると心理的な抵抗感を感じてしまいます。

また、新技術の導入には法律や制度なども修正しなければなりません。ドローンのような画期的な製品が開発されたとしても、飛行禁止区域や使用資格を設けるなどして、既存のサービスや制度を調整する必要があります。

一方で、新興国であれば新技術の販売や使用方法に関して、先進国と比較して規制がかかっていないため、企業としても開発、普及がしやすい状況にあります。同様に前例となる既存サービスも少ないため、新技術の導入に対しても前向きに検討される環境があるのです。

新技術開発のための開発コストが低い

新興国で導入する新技術は、既に先進国内で普及しているためモデルケースが存在しています。すなわち新興国で新たに技術開発をするのではなく、先進国での事例やデータを基に新興国市場に普及させていくことになります。そのため必要以上の開発コストや時間をかけることなく、最新技術を導入することが可能です。また、先進国ほど前例となるサービスもないため、消費者ニーズも機能や性能などに関して複雑化することはありません。むしろ新興国市場でも普及するような価格設定にするべく、機能もシンプルに価格を抑える必要があります。

 

アフリカでのリープフロッグ現象の事例

以下では、実際にアフリカでリープフロッグ現象が起こった事例をご紹介していきます。

Zipline(ジップライン)社

米国のZipline社は、ドローンを利用した医療品配達サービスをルワンダで展開しているベンチャー企業です。インフラ整備が整っていないルワンダでは、車や人でも移動が困難な道が珍しくありません。そこでZipline社は、政府と提携してドローンの空港をルワンダ国内に2ヶ所作ることで、血液パックや医薬品を届けています。全自動で配達場所までドローンが移動し、パラシュートで配達物を投下する手法をとることで、飛行にかかるコストの削減を実現しているのです。現在では1日におよそ30回ほど利用され、ルワンダ国内で必要な血液パックの内およそ6割を運ぶなど、物流インフラとして広く普及しています。

参考:https://toyokeizai.net/articles/-/440773?page=2
参考:https://japan.cnet.com/article/35150224/

babylon/babel社

英国のbabylon/babel社は、ルワンダでAIによる医療診断サービスを展開するベンチャー企業です。ルワンダの人口およそ8割が居住している農村部では、大きな病院がほとんどありません。babylon/babel社は、ルワンダの保健省と提携し一回20円ほどの診察代で、AI診断サービスを展開しはじめました。まずはAI診断を行い、初期診断をチャットボットにて返答します。もしもAI診断だけでは対処が難しい場合は、ナース、ドクターと遠隔で診断をするといったシステムです。2019年時点で累計200万人以上が利用しており、ルワンダ国内の人口がおよそ1200万人であることを考えると、二割弱が利用している計算になります。

参考:https://toyokeizai.net/articles/-/440773

 

リープフロッグ現象で成功するためには

それでは新たにビジネスを展開する場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。ここからは日本の企業がアフリカ市場に参入する際に、認識しておくべきことについて解説していきます。

現地のニーズを的確に捉える

一つ目は「現地のニーズを的確に捉える」ことです。例えば新興国では、先進国で需要のあるいわゆるブランド品ではなく、より実用的な商品やサービスの方が好まれる傾向があります。これは新興国と先進国ではインフラや所得水準、経済環境が異なるためです。リープフロッグ現象がアフリカで起きる際も、最新技術を使えば今よりも低コストで生活水準を向上できる前提の上で成り立っています。

先述したZipline社は、インフラが整備されていない環境でも必要な時に輸血パックが欲しい、というニーズに応え浸透していきました。一方で、Apple社が先進国と同様のiphoneを展開したところ2020年にわずか1%のシェアにとどまっています。

スマートフォン普及率が8割を超えるアフリカでの、こうした現状はいかに世界中で人気な商品であっても市場によってカスタマイズが必要であるということがわかります。

参考:https://iphone-mania.jp/news-361705/#:~:text=Apple%E3%81%AF%E3%80%812019%E5%B9%B4%E3%81%AB,%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

必ずしも最新技術である必要はない

二つ目は「必ずしも最新技術である必要はない」ということです。語弊が生まれないようにいうと、もちろん商品のスペックが低い方が良いというわけではありません。利用する現地人に求められていることができるスペックは、提供する商品、サービスとして必要不可欠です。ただ一方で、消費者にとってどんなスペックの商品が最適か、ということも考える必要があります。例えばZipline社のドローン配達サービスでは、開発に時間をかければ着地点やセキュリティ面で、より緻密な設定が可能かもしれません。しかし、消費者はそういった技術スペックの向上ではなく、「血液を必要な時にスムーズに届けてもらえる」サービスを望んでいます。

また、多くの技術スペックを搭載した商品は、使用手順が複雑になってしまう側面もあります。技術的な前例の少ない環境下の人々にとっては、直感的に使用できるシステムが望ましいでしょう。

使い手は何の機能を求めているのか、どんな価値提供を最も望んでいるのかを知ることが、サービスの普及につながります。

消費者が最も求めていることを知ることが大切

今回は、アフリカで起こっているリープフロッグ現象について、事例とともにご紹介しました。アフリカに限らず新興国で起こったリープフロッグ現象は、現地で生活している人々の日常生活での不満を的確に認知することで、新たな価値を提供することを可能にしてきました。日本から新規事業をこれからアフリカで展開するためには、こうした現地への理解を深める必要があります。

AA HealthDynamicsでは、アフリカやアジアの国々に向けた伴走型新規事業開発コンサルティングやヘルスケア・ビジネスを展開しております。「新興国への事業進出は興味あるけど、マーケット知識に不安がある」「自社のサービスをグローバルなものにしたい」という方は、ぜひお気軽にお問合せください。
西能克

西能克

Webメディアや企業サイトの記事を制作するフリーランスのライター。 不動産会社での営業経験を活かし、ビジネス系の事例や製品サービスの紹介、企業サイトのコンテンツやインタビュー記事などの執筆を行っている。 徹底した下調べでSEO対策とともに対象の魅力を引き出すコンテンツを制作する。 趣味はプロレス観戦。起床後に過去の試合をモバイル視聴することがモーニングルーティーンになっている

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